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延期されていた「表現の不自由展・東京」がはじまる 最高裁の決定が後押しに
2022年04月03日 09時43分

東京都国立市の「くにたち市民芸術小ホール」で、4月2日から5日まで「表現の不自由展・東京2022」が開催されている。昨年6月の開催予定だったが、反対団体が会場近辺で街宣をするなどの抗議活動がおこなわれ、延期に追い込まれていた。

昨年12月には、主催者あてに「髪を引きずり回される表情がみてみたいわ」「おまえらの中で、死人が出ても不思議ではない」などと書いたメールを送った男性が脅迫の疑いで逮捕される事件も起きている。(ライター・碓氷連太郎)

東京都国立市の「くにたち市民芸術小ホール」で、4月2日から5日まで「表現の不自由展・東京2022」が開催されている。昨年6月の開催予定だったが、反対団体が会場近辺で街宣をするなどの抗議活動がおこなわれ、延期に追い込まれていた。

昨年12月には、主催者あてに「髪を引きずり回される表情がみてみたいわ」「おまえらの中で、死人が出ても不思議ではない」などと書いたメールを送った男性が脅迫の疑いで逮捕される事件も起きている。(ライター・碓氷連太郎)

●最高裁決定が「開催」を後押し

表現の不自由展・東京実行委員会は、開催に先立つ3月25日、都内で開いた記者会見で「平穏に芸術鑑賞の機会を提供したい。違法な行為には断固とした対応をとる」と宣言。

そのうえで、会場を国立市の市民ホールにした理由を「国立市は条例にもあるように、人権を尊重し多様性を認め合う平和なまちづくりをしている」と説明した。

実行委員の岡本有佳さんによると、今回開催されることになったのは、「大阪展」における最高裁決定が大きく影響しているという。

昨年は、大阪と名古屋でも開催されることになっていたが、名古屋は会場に届いた郵便物から破裂音がしたことから、会期途中で事実上中止となっている。一方、大阪で7月に開かれた「表現の不自由展かんさい」は3日間の会期を終了した。

会場となった大阪府立労働センター「エル・おおさか」は、2021年3月6日に施設利用が認められたにもかかわらず、指定管理者が6月25日に利用承認を取り消した。

実行委員会は6月30日に取り消し処分の執行停止を大阪地裁に申し立てると、7月9日に大阪地裁が執行停止を認めた。指定管理者側は抗告したものの、同16日に最高裁は、抗告を退ける決定を下している。

「昨年8月から、実行委員会と弁護士を含めて、民間ギャラリーと公共の場所のどちらで開催するかを話し合った。自分の目で名古屋と大阪の会場を見学したが、エル・おおさかは地域の人たちにとって、重要な公共施設であることを自分の目で見て驚いた。

東京では1990年代以降、日本軍慰安婦問題や天皇制の問題についての集会の会場を借りることが、とても難しくなっていった。そうなると借りられる場所に行きがちになってしまっていたが、公共の場は市民が自由に使い、守っていかないとならないと大阪で痛感した。

また大阪では最高裁決定もあり、警察が施設を守っていた。開催を発表すれば妨害が入ることはわかっていたので、東京でも公共施設で開催するしかないということで一致した」(岡本さん)

●ボランティアと弁護士が運営に参加

実行委員会が昨年9月に申し込みに行くと、同じ日に借りたい希望者が他にいなかったので、その場で許可を得た。

ところが1週間後、館長から「いつもはしないのだが、今回は面談をしてもらえないか」という電話があったという。その際、大阪の件を意識したのか「貸さなきゃいけないんですよね」と言われたそうだ。

実行委員会側と施設側は、今年3月までに7回にわたる協議を続けてきたが、3回目の協議から国立市教育委員会が加わった。

また、地元メンバーによる「芸術展開催を実現する会」が発足され、これらに加えて延べ240人のボランティアと約60人の弁護士が当日の運営にあたる体制を築いた。

今回は、いずれも展示不許可や会場による自粛などで撤去された16組のアーティストが出品している。

昨年中止になったプログラムと同様に「平和の少女像」は展示されているものの、「内なる天皇を昇華させていく」シーンがある映像作品の「遠近を抱えてpart2」は、当初から展示予定がない。

また、世田谷区の施設で「レズビアン」という言葉の使用が禁止された経緯をもつ「Self-portrait1996」など、イトー・ターリさんの作品が新たに加えられた。

「作品と直接会っていただき、どんな目に遭ったのかを踏まえて、作品と向き合っていただきたい」「開催できないのは日本の民主主義の危機で、自分たちの問題でもある」(岡本さん)

●チケットは完売

初日の4月2日、開場前から会場周辺に保守団体が詰めかけ、「強制連行なんかなかった!」「表現の不自由展を中止せよ!」と叫ぶ街宣車が徘徊するなど、異様な雰囲気に包まれていた。

しかし、100人以上の体制で警察が警備をする中、施設管理者側による手荷物検査がおこなわれ、来場者はスムーズに入場できていた。先日の会見で、岡本さんが「やれるだけのことはやった」と語ったように、大きな混乱は見られなかった。

午前中に鑑賞したという世田谷区の40代男性は「行政や美術館が排除した表現の成果を、こうして見られることは大切な機会。政府の方針で「従軍慰安婦」という歴史的文言が教科書から排除された昨今において、設置の是非とは別に、少女像が公にされることは意義深い」と語った。

展示は50分の入れ替え制になっているが、1600人分用意したチケットはすでに売り切れている。開催にあたり、運営費や警備スタッフの経費、弁護士の運営サポート費にかかる552万円については、うち400万円を集めるために4月15日までクラウドファンディングがおこなわれている。

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