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スキーバス転落事故で多数の死傷者ーー賠償責任は誰が、どのように負うのか?
2016年01月15日 16時20分

スキー客を乗せたバスが1月15日未明、長野県軽井沢町のバイパス道路から転落し、多数の死傷者が出た。乗員2人を含む14人が死亡し、27人がケガをしたという。

報道によると、バスの乗客は、東京都渋谷区のツアー会社が企画した1泊2日のスキーツアーの参加者で、男女39人と交代要員を含む運転手2人が乗車していたという。バスは、東京都羽村市の会社が運行していた。

このバスは1月14日の夜に東京・新宿を出発し、長野県の北志賀高原に向かっていたという。現場は、下り坂の緩やかな左カーブの道路。事故当時、雪や雨は降っておらず、路面も凍結していなかったということで、警察は過失運転致死傷の疑いで捜査をしている。

このような事故の場合、バスの乗客が受けた被害の賠償・補償は、誰が、どのようにして負うのだろうか。まだ事故の詳細な状況は明らかでなく、ツアー会社とバス運行会社の関係も不透明だが、どのような可能性が考えられるだろうか。冨本和男弁護士に聞いた。

スキー客を乗せたバスが1月15日未明、長野県軽井沢町のバイパス道路から転落し、多数の死傷者が出た。乗員2人を含む14人が死亡し、27人がケガをしたという。

報道によると、バスの乗客は、東京都渋谷区のツアー会社が企画した1泊2日のスキーツアーの参加者で、男女39人と交代要員を含む運転手2人が乗車していたという。バスは、東京都羽村市の会社が運行していた。

このバスは1月14日の夜に東京・新宿を出発し、長野県の北志賀高原に向かっていたという。現場は、下り坂の緩やかな左カーブの道路。事故当時、雪や雨は降っておらず、路面も凍結していなかったということで、警察は過失運転致死傷の疑いで捜査をしている。

このような事故の場合、バスの乗客が受けた被害の賠償・補償は、誰が、どのようにして負うのだろうか。まだ事故の詳細な状況は明らかでなく、ツアー会社とバス運行会社の関係も不透明だが、どのような可能性が考えられるだろうか。冨本和男弁護士に聞いた。

●賠償責任は、誰が負うのか?

「事故の詳細が明らかになっていない段階なので、一般論としてお答えします。まず、バスの運転手に過失がある場合、事故を起こしたことが民法上の不法行為(709条)にあたるとして、被害者や遺族に賠償責任を負う可能性があります。

今回の事故のように運転手が死亡している場合には、その責任を運転手の遺族が相続することになります。

また、運転手を雇っていたバス会社には、使用者の責任として、賠償責任を負う可能性があります(715条)。

バス会社の責任については、被用者(バス運転手)を選任したことや事業の監督に過失がなければ、免責されることが規定されています(715条1項ただし書き)。ただし、裁判所は免責について、かなり厳格に考えているので、賠償責任を負う可能性が高いでしょう。

なお、バス会社が損害保険に加入している場合は、保険会社が被害者に対する補償をすることになるでしょう」

ツアー会社については、どうだろうか。

「参考になる裁判例があります。これは海外で起きたバスの転落事故の事例でした。結果的に損害賠償責任を否定しましたが、旅行を主催した業者には、次のような義務があると示しました。

『旅行業者には、主催旅行契約の相手方である旅行者に対し、主催旅行契約上の付随義務として、旅行者の生命、身体、財産等に関し、あらかじめ十分に調査・検討し、専門業者としての合理的な判断をし、また、その契約内容の実施に関し、遭遇する危険を排除すべく合理的な措置をとるべき注意義務がある』(東京地裁平成元年6月20日判決)。

今回のケースでも、ツアー会社にこうした注意義務の違反が認められるような事情があれば、ツアー会社にも賠償責任が生じる可能性はあると思います」

●刑事責任の可能性は?

刑事責任についてはどうだろうか。

「まず、運転手については、過失運転致死傷罪にあたる可能性があります。ただし、今回は運転手が死亡してしまっているため、起訴されることはありません。

また、運転手が超過勤務などで疲労がたまっている状態であったのならば、過労運転の禁止(道交法66条)にも違反する可能性があります。この場合は、運転を命じたバス会社が、刑事責任を問われる可能性があります(道交法75条、119条)」

冨本弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

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