11664.jpg
「俺に何かあったら訴えろ」50代男性の過労死、会社と役員個人に賠償命令
2021年01月21日 18時33分

機械部品製造会社で営業を担当していた男性(当時51)が亡くなったのは、長時間労働が原因として、遺族が会社と当時の役員3人に計約6400万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は1月21日、役員への請求を棄却した一審を変更し、会社と役員1人に対し、計約2355万円の賠償を命じた。

会見した男性の長男は「ひとまず控訴してよかった。会社が倒産しても経営者を訴えれば、責任が追及できると証明できた」と話した。

機械部品製造会社で営業を担当していた男性(当時51)が亡くなったのは、長時間労働が原因として、遺族が会社と当時の役員3人に計約6400万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は1月21日、役員への請求を棄却した一審を変更し、会社と役員1人に対し、計約2355万円の賠償を命じた。

会見した男性の長男は「ひとまず控訴してよかった。会社が倒産しても経営者を訴えれば、責任が追及できると証明できた」と話した。

●発症前2カ月は平均98時間の時間外労働

判決などによると、男性は1989年に「サンセイ」(神奈川県厚木市)に入社し、岩手県奥州市の支社で勤務していた。1996年ごろに営業に異動になり、2007年ごろから係長を務めていた。2011年8月に自宅で倒れ、病院に搬送されたが脳出血のため亡くなった。「サンセイ」は2012年12月に解散した。

男性は生前、「この会社はおかしい。俺に何かあったら訴えろ」などと妻に訴えていたという。

花巻労働基準監督署は2012年7月、脳出血は業務上のものであるとして労災認定した。脳出血の発症前1カ月の時間外労働は約85時間、2カ月前は約111時間と認めた。

●高裁の争点は?

高裁判決の争点は、(1)会社だけでなく取締役の個人責任が認められるか、(2)男性が基礎疾患を患っていたことからどの程度過失相殺が認められるか、の2点だった。

(1)について、一審横浜地裁は、支社の工場長と本社勤務の社長、会長についていずれも責任を認めなかった。

一方、高裁は、支社の工場長について「男性の過労死のおそれを認識しながら、従前の一般的な対応に終始し、男性の業務量を適切に調整するために実効性のある措置を講じていなかった」と指摘。

「悪意までは認められないとしても過失があり、過失の程度は重大」として、責任を認めた。一方、本社勤務の社長と会長については、遺族の訴えを却下した。

代理人の伊藤克之弁護士は「常識的な判断で、評価すべき。地裁判決よりも一歩前進したが、社長の責任を認めなかったことについては不十分だと考えている」と話した。

(2)について、一審横浜地裁は、男性の基礎疾患である高血圧が「業務とは無関係に、脳出血の発症につながる要因があった」として、損害額を7割減額した。

一方、高裁は、「会社としては自分の健康状態を十分に顧みることなく、その職責を果たそうとする熱心な労働者がいることも考慮した職場環境を構築すべき」として、損害額を5割減額と改めた。

男性の長男は高校卒業後に社会人となっていたが、父の過労死がきっかけで、過労死問題を勉強するために大学に入学した。過労死している人が日本で大勢いると知り、裁判を決意したという。

男性の長男は「疲労が蓄積がされることで持病をもつようになり過労死が起きる。損害額が半分まで減額されるのは納得していません」として上告する方針を明らかにした。

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る