12138.jpg
「ばかたれ」「ぶっとばすぞ」…服役中に死亡した受刑者に「不適正な処遇」 名古屋刑務所が遺族に”異例”の謝罪
2024年11月06日 19時05分
#受刑者 #異例の対応 #名古屋刑務所 #変死

名古屋刑務所に服役していた受刑者の男性(当時71歳)が2022年3月に死亡したことをめぐり、遺族の代理人弁護士が11月6日、名古屋刑務所と同刑務所を管轄する名古屋矯正管区が11月5日に男性の遺族に対して「不適正な処遇があった」という趣旨の説明と謝罪をしたことを明らかにした。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)

名古屋刑務所に服役していた受刑者の男性(当時71歳)が2022年3月に死亡したことをめぐり、遺族の代理人弁護士が11月6日、名古屋刑務所と同刑務所を管轄する名古屋矯正管区が11月5日に男性の遺族に対して「不適正な処遇があった」という趣旨の説明と謝罪をしたことを明らかにした。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)

●名古屋刑務所で発覚した暴行事件と同時期に死亡

代理人弁護士や遺族によると、男性は暴行罪で懲役10月の判決を受けて名古屋刑務所に収容された。2022年4月に出所する予定だったが、同年3月1日に多臓器不全で死亡した。

遺族が男性の遺体を引き取った際、身体中に傷や拘束された跡を発見し、名古屋刑務所に詳しい説明を求めたが納得できる対応がなされなかったという。

名古屋刑務所では同じ時期に、複数の刑務官が受刑者らに暴行や暴言を繰り返していた問題が発覚し、法務省が2022年12月に有識者による第三者委員会を設置して検証を始めた。

不信感を強めた遺族は2023年1月、この第三者委員会に男性が死亡した経緯の調査を申し入れた。そして、2023年4月に、男性が適切な医療を受けられずに死亡したとして国家賠償請求訴訟を東京地裁に起こした。

●関わった刑務所職員7人を処分

そんな中、名古屋刑務所の幹部から突然、遺族に連絡があり、受刑中に亡くなった男性について不適正な処遇があったことを認めた上で謝罪があったという。

具体的には、刑務官から男性に対して「ばかたれ」「どあほ」「ばか」「ぶっとばすぞ」などの暴言があったり、男性が「水ください」「薬ください」と求めたのに対応しなかったりした事実が確認されたとの説明を受けた。

また名古屋刑務所は11月6日、関わった職員7人を戒告などの処分にし、うち1人については私印不正使用の疑いで名古屋地検に書類送検した。

●遺族「死に追いやったことが許せない」

遺族代理人の海渡雄一弁護士は「遺族に謝罪することはある意味当然だが、これまではその当然がされてこなかった。今回の刑務所や矯正管区の対応は異例のものだと思う。それは我々も前向きに受け止めている」と述べた上で、「今回一番重要なのは、本人が胸が痛いといっているのに適切な医療処置をしなかったこと。刑務官が『ぶっとばすぞ』などと言っている状況で、まともな医療が提供されているわけがない」と話した。

また、国家賠償請求訴訟で遺族側が、心筋梗塞の症状を訴えていた受刑者に適切な医療が行われなかったことで死亡したと主張している点に触れ、「名古屋矯正管区や名古屋刑務所には、遺族にもう一歩寄り添う対応を求めたい」と述べた。

男性の遺族は、死亡の知らせを受けた際に遺体のまま引き取るか遺骨として引き取るかを選ぶように刑務所側から聞かれ、遺体で引き取ることにした経緯を明かし、「身内が刑務所に入って亡くなったらほとんどの人がおそらく遺骨として返してもらうと思うが、遺骨で返してもらったら兄の体の傷は分からなかった。焼いてしまったら証拠がなくなってしまう。同じようなことが名古屋刑務所ではたくさんあったのではないかと想像しています」と話した。

そして、「兄の死について刑務所が責任を争い続けるのはおかしい。なぜ兄だけが集中攻撃を受けたのか。兄を死にまで追いやったことが許せません」と訴えた。

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る