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一流企業の高収入男性と幸せな結婚…のはずが全部ウソ、妻「白紙に戻したい!」
2019年07月24日 09時56分

会社員の女性、M美さんは最近、お付き合いしていた高収入で一流企業にお勤めの男性と結婚しました。華やかな結婚式を挙げ、都内で高級マンションを借りて、幸せな新婚生活をスタートさせました。ところが、数カ月後も経つと、家賃が滞納していることがわかりました。

M美さんが家賃を振り込んでいたはずの夫を問い詰めたところ、実は無職だったと告白したそうです。夫がM美さんに見せたり、部屋の賃貸契約に使っていた高収入の給与明細や源泉徴収票も、夫の偽造だったことが判明しました。

M美さんが問い詰めたところ、夫は実家からの援助でやりくりしていましたが、すぐにお金が足りなくなり、借金も重ねていたことが判明しました。「M美と結婚したかったから嘘をついてしまった。自分も借金をしてつらかった」と泣いたそうです。

すっかり愛想を尽かしたM美さんは、結婚自体をなかったことにしたいと考え、婚姻無効の申し立てをするつもりですが、無職の夫が勤め先や収入を偽っていた場合、認められるのでしょうか。下大澤優弁護士に聞きました。

会社員の女性、M美さんは最近、お付き合いしていた高収入で一流企業にお勤めの男性と結婚しました。華やかな結婚式を挙げ、都内で高級マンションを借りて、幸せな新婚生活をスタートさせました。ところが、数カ月後も経つと、家賃が滞納していることがわかりました。

M美さんが家賃を振り込んでいたはずの夫を問い詰めたところ、実は無職だったと告白したそうです。夫がM美さんに見せたり、部屋の賃貸契約に使っていた高収入の給与明細や源泉徴収票も、夫の偽造だったことが判明しました。

M美さんが問い詰めたところ、夫は実家からの援助でやりくりしていましたが、すぐにお金が足りなくなり、借金も重ねていたことが判明しました。「M美と結婚したかったから嘘をついてしまった。自分も借金をしてつらかった」と泣いたそうです。

すっかり愛想を尽かしたM美さんは、結婚自体をなかったことにしたいと考え、婚姻無効の申し立てをするつもりですが、無職の夫が勤め先や収入を偽っていた場合、認められるのでしょうか。下大澤優弁護士に聞きました。

●収入額を偽っていても、ただちに「婚姻無効」にはならない

無職の人が勤め先や収入について嘘をついて結婚した場合、その婚姻は無効と認められるのでしょうか?

「婚姻が無効となる場合については、民法742条に定められています。本事例で問題となり得るのは、『人違いその他の事由によって当事者間に婚姻をする意思 がないとき』(民法742条1号)に該当するか否かです。より細かくいえば、『人違い』 に該当するか否かが問題となります。

この点、『人違い』とは、婚姻当事者の同一性に関する錯誤(『錯誤』とは、わかりやすく言い換えると『勘違い』ということです)を意味し、婚姻当事者の性質(地位、性格等) に関する錯誤は含まれません。つまり、婚姻をしようと考えていた相手と、実際に婚姻をし た相手とが別人であった等の極端な場合を除き、『人違い』を理由に婚姻の無効を主張する ことはできません。

本事例では、夫の性質(一流企業勤めで高収入であること)についての錯誤は存在しますが、『人違い』に該当する事情は存在しないため、婚姻の無効は認められないでしょう」

では、婚姻の無効が認められなかった場合、収入などを偽っていたことは、離婚理由として認められるのでしょうか?

「夫婦の一方が収入等を偽っていたことを理由に離婚を求める場合、『婚姻を継続し難い重 大な事由』(民法770条1項5号)に該当するか否かがポイントとなります。

この点、『婚姻を継続し難い重大な事由』とは、婚姻関係が破綻している状態(夫婦とし ての信頼関係が完全に失われ、かつ、信頼関係の回復の見込みがないこと)を意味します。   『婚姻を継続し難い重大な事由』が認められるためのハードルは決して低くはないため、 夫婦の一方が収入額を多少偽っていたり、多少の借金の存在を隠していたりしていた程度で 、ただちに『婚姻を継続し難い重大な事由』が認められるものではありません」

●高級マンションを借りるための詐欺や私文書偽造は?

では、離婚は難しいのでしょうか?

「しかしながら、本事例では

(1)婚姻前から職業や収入を偽っていたこと (2)偽りの程度が大きい(高収入と無収入)こと (3)マンションを賃借するために収入を証する書類を偽造したこと

といった特殊な事情が存在します。(1)と(2)は、婚姻後の生活設計を行う上で重要な事実です。このような事実が偽られ、かつ、偽りの程度が大きい場合には、当初の生活設計と現実の生活との間に大きなギャップが生じるため、婚姻関係を維持するために生活設計を根本から修正する必要が生じます。婚姻の開始当初からこのような事態が生じるとなれば、夫婦間の信頼関係は大きく揺らぎます。

また、(3)については、夫婦間の問題にとどまらず、詐欺や私文書偽造・行使といった犯罪行為に該当し得るものです。夫が、高級マンションを賃借するために犯罪行為に手を染めたとなれば、夫婦間の信頼関係が失われることもやむを得ないでしょう。

以上のことからすると、本事例においては、既に夫婦間の信頼関係が失われ、信頼関係を 回復することは相当に困難であるといえます。したがって、『婚姻を継続し難い重大な事由 』が存在するものとして離婚が認められる可能性はあるといえるでしょう。

最後に、本事例において『婚姻を継続し難い重大な事由』が認定される場合、その責任が 夫にあることは明らかです。そうすると、婚姻関係が破綻に至った責任は夫にあり、夫は、 妻が被った損害(離婚を余儀なくされることによる精神的苦痛等)を賠償する義務を負うこととなります。したがって、妻が夫に対し慰謝料等を請求する余地もあります」

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