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「何回も盗まれたからチャラ」ビニール傘持ち去り、実際に検挙される可能性は?
2016年05月22日 06時57分

病院にあったビニール傘を持ち去ったところ、被害届を出されてしまった。逮捕されるかもしれない――。このような投稿が5月中旬、インターネット掲示板に書き込まれて、話題になった。

投稿した人は、治療でおとずれた病院で、ビニール傘を盗んだという。その後、傘の持ち主が被害届を出したため、警察に呼び出された。投稿者はシラを切ろうとしたが、防犯カメラに映っていたそうで「逮捕されるかもしれない」と不安な心情を打ち明けている。

投稿者のように、自分のビニール傘がなくなっていたために、他の人のを持ち帰ったという人は少なくないかもしれない。投稿者も「ビニール傘盗まれたくらいで怒るのは理解できない」「何回も盗まれているんだからその分盗んでチャラ」などと主張している。

日本の法律上、他人のものを盗んだら、窃盗罪に問われる。今回のように、ビニール傘を盗んだ場合も罪に問われるのだろうか。また、実際に検挙されるようなことはあるのだろうか。富永洋一弁護士に聞いた。

病院にあったビニール傘を持ち去ったところ、被害届を出されてしまった。逮捕されるかもしれない――。このような投稿が5月中旬、インターネット掲示板に書き込まれて、話題になった。

投稿した人は、治療でおとずれた病院で、ビニール傘を盗んだという。その後、傘の持ち主が被害届を出したため、警察に呼び出された。投稿者はシラを切ろうとしたが、防犯カメラに映っていたそうで「逮捕されるかもしれない」と不安な心情を打ち明けている。

投稿者のように、自分のビニール傘がなくなっていたために、他の人のを持ち帰ったという人は少なくないかもしれない。投稿者も「ビニール傘盗まれたくらいで怒るのは理解できない」「何回も盗まれているんだからその分盗んでチャラ」などと主張している。

日本の法律上、他人のものを盗んだら、窃盗罪に問われる。今回のように、ビニール傘を盗んだ場合も罪に問われるのだろうか。また、実際に検挙されるようなことはあるのだろうか。富永洋一弁護士に聞いた。

●貴重品かビニール傘かで、犯罪の成否に変わりはない

 

「盗んだものが、貴重品かビニール傘かで、犯罪の成否に変わりはありません」

富永弁護士はこのように述べる。

「窃盗罪は、他人の『占有』するものを盗んだ場合に成立します(刑法235条)。

今回のケースは、病院でビニール傘を盗んだということです。この場合、傘の持ち主か、あるいは病院がその傘を『占有』していることになります。したがって、窃盗罪が成立します。

一方で、電車の座席や網棚のように、一般人の立ち入りが自由にできて、管理者よる管理が十分に及んでいないような場所に置き忘れたものについては、他人の『占有』が否定されて、窃盗罪は成立しません。ただ、この場合は、『占有を離れた』他人のものを横領したことになり、占有離脱物横領罪が成立します(刑法254条)。

他方で、公道や駅の待合室・ホーム、バスの停留所、デパートのベンチなどの公共的な場所に放置されたものについて、持ち主がまだ時間的・場所的に離れておらず、持ち主がすぐに取りに戻ったような場合、まだ『占有が継続』していたとして、窃盗罪がみとめられた例もあります」

結論として、今回のようにビニール傘を盗んだ場合、窃盗罪が成立するということだ。

●「負の連鎖」を断ち切るべし

だが、ビニール傘を誰かに持ち去られて、よく似た別の傘を持ち帰るという人は少なくないかもしれない。この場合も罪に問われるのだろうか。

「もし、自分の傘ではないと気づいていた場合、『故意』に盗んだことになり、窃盗罪が成立します。

一方で、自分の傘だと勘違いして持ち帰った場合には、犯罪の『故意』がないということになり、持ち帰った行為について、窃盗罪は成立しません。

ただし、勘違いして持ち帰った場合でも、あとになって他人の傘だと気づいたのに、自分の物のように使い続けたとしたら、あらためて占有離脱物横領罪が成立することになります」

では、実際に検挙されるようなことはあるのだろうか。

「法律上の犯罪が『成立』することと、実際に検挙されて『罪に問われる』かどうかは、少し別の話になります。放置されたビニール傘を盗んで検挙されるケースは、実際にはほとんどないでしょう。

しかし、現行犯で持ち主に捕まったり、警察に通報された場合や、ストーカーや嫌がらせなどで特定の個人を狙った悪意のある場合、いつも同じ場所で常習的に盗んでいる場合などは、警察から注意や警告を受けたり、ケースによっては逮捕・勾留されて刑事罰を受けることになる可能性もあります。

いずれにせよ、雨の日に傘が盗まれるとイヤな気分になるものです。だからといって、自分も、他の人の傘を盗むのでは、イヤな気分の連鎖が止まりません。そんな『負の連鎖』を断ち切って、いっそのこと雨に濡れたほうが気分は晴れやかになるかもしれません」

富永弁護士はこのように話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

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