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炎天下のバスに乗客が「閉じ込められた」 気づかなかった運転手の責任は?
2013年08月21日 19時20分

電車やバスでついウトウトしてしまい、目が覚めたら駅を乗り過ごしていた。そんな経験は誰でもあるだろう。しかし終点まで寝過ごし、降りそこなってしまうと一大事だ。横浜市営バスでは8月11日、終点に着いたことに気付かず寝ていた女性が、炎天下のバスで約1時間を過ごす羽目になった。

朝日新聞によれば、バスが終点に到着したのは午前11時。運転手は後部の座席で寝ていた女性に気付かぬまま、近くの待機場にバスを移動させ、車内を巡回をすることなく降車した。目を覚ました女性はおよそ45分後、「バスから出られない」と助けを求める電話を営業所にかけ、駆けつけた乗務員に扉を開けてもらって、外に出ることができた。

この日の正午、横浜市の気温は35.9度。クーラーが切れた車中はかなりの高温になっていただろう。もちろん寝ていた女性にも落ち度はあるが、携帯電話が使えず、もっと長い時間、誰にも気づいてもらえなかったらと思うとヒヤッとする。

今回のようにバスに置き去りにされたことが原因で、もし熱中症になってしまったら、バスの運営側に責任を問えるのだろうか。野村創弁護士に聞いた。

●車内巡回が「義務」と言える状況だったかどうかが、ポイント

「そのような経緯で熱中症になった(損害が出た)場合、運転手の不法行為による『使用者責任』(民法715条)を、バスの運営側(使用者)に対して追及すれば、損害賠償請求が成り立つ可能性があります。

そのための要件は、運転手の行為に『違法性』と『故意・過失』があることです」

――どんな場合なら要件を満たす?

「たとえば、『運行終了後にバス車内を巡回すること』と職務規程などで定められていたのに、運転手がそれを怠った……という場合には要件を満たすでしょう。

規程の巡回を怠ったこと自体が不法行為法上『違法』とされ、よほどのことがない限り過失が推定されるからです。通常はそのような規程が定められていると思います」

――それでは、規程等で巡回義務が定められていなかったら?

「その場合、運転手の注意義務として、運転終了後に巡回する義務が認められる必要があります。

座席で横になって寝ている乗客を発見するためには巡回する必要がありますが、その時どんな状況なら、『運転手には、座席で寝ている人の存在を想定して、巡回をする義務があった』と言えるかという話です」

――状況とは、たとえば?

「たとえば、それが午後11時であれば、横になって寝込んでしまう人がいることも当然想定すべき……つまり、巡回すべきでしょう。

しかし、午前11時の時点で、そこまでの事態を想定しうるか(予見可能性)、想定しなければならないか(予見義務)、当時の気候はどうだったか、というと、若干微妙な問題になってきます」

――ケースバイケースという側面が強いように思える。

「そうですね。予見可能性や予見義務に疑問が残るようであれば、裁判所も、過失を認めることには慎重になるでしょう」

――「使用者責任」以外の追及もあり得る?

「本件のような場合は、旅客運送契約に基づく安全配慮義務違反の問題としてとらえることもできます。ただ本質的には同じで、一定の事実関係を前提とした上で、『バス運営側に求められる義務の範囲はどこまでなのか』という問題に帰着すると思います。

一方、国家賠償法に基づく請求は、一見成り立ちそうですが、難しいでしょう。市営バス事業のような純粋な私経済作用は、同法でいう『公権力の行使』には当たらないと解されているからです」

(弁護士ドットコムニュース)

電車やバスでついウトウトしてしまい、目が覚めたら駅を乗り過ごしていた。そんな経験は誰でもあるだろう。しかし終点まで寝過ごし、降りそこなってしまうと一大事だ。横浜市営バスでは8月11日、終点に着いたことに気付かず寝ていた女性が、炎天下のバスで約1時間を過ごす羽目になった。

朝日新聞によれば、バスが終点に到着したのは午前11時。運転手は後部の座席で寝ていた女性に気付かぬまま、近くの待機場にバスを移動させ、車内を巡回をすることなく降車した。目を覚ました女性はおよそ45分後、「バスから出られない」と助けを求める電話を営業所にかけ、駆けつけた乗務員に扉を開けてもらって、外に出ることができた。

この日の正午、横浜市の気温は35.9度。クーラーが切れた車中はかなりの高温になっていただろう。もちろん寝ていた女性にも落ち度はあるが、携帯電話が使えず、もっと長い時間、誰にも気づいてもらえなかったらと思うとヒヤッとする。

今回のようにバスに置き去りにされたことが原因で、もし熱中症になってしまったら、バスの運営側に責任を問えるのだろうか。野村創弁護士に聞いた。

●車内巡回が「義務」と言える状況だったかどうかが、ポイント

「そのような経緯で熱中症になった(損害が出た)場合、運転手の不法行為による『使用者責任』(民法715条)を、バスの運営側(使用者)に対して追及すれば、損害賠償請求が成り立つ可能性があります。

そのための要件は、運転手の行為に『違法性』と『故意・過失』があることです」

――どんな場合なら要件を満たす?

「たとえば、『運行終了後にバス車内を巡回すること』と職務規程などで定められていたのに、運転手がそれを怠った……という場合には要件を満たすでしょう。

規程の巡回を怠ったこと自体が不法行為法上『違法』とされ、よほどのことがない限り過失が推定されるからです。通常はそのような規程が定められていると思います」

――それでは、規程等で巡回義務が定められていなかったら?

「その場合、運転手の注意義務として、運転終了後に巡回する義務が認められる必要があります。

座席で横になって寝ている乗客を発見するためには巡回する必要がありますが、その時どんな状況なら、『運転手には、座席で寝ている人の存在を想定して、巡回をする義務があった』と言えるかという話です」

――状況とは、たとえば?

「たとえば、それが午後11時であれば、横になって寝込んでしまう人がいることも当然想定すべき……つまり、巡回すべきでしょう。

しかし、午前11時の時点で、そこまでの事態を想定しうるか(予見可能性)、想定しなければならないか(予見義務)、当時の気候はどうだったか、というと、若干微妙な問題になってきます」

――ケースバイケースという側面が強いように思える。

「そうですね。予見可能性や予見義務に疑問が残るようであれば、裁判所も、過失を認めることには慎重になるでしょう」

――「使用者責任」以外の追及もあり得る?

「本件のような場合は、旅客運送契約に基づく安全配慮義務違反の問題としてとらえることもできます。ただ本質的には同じで、一定の事実関係を前提とした上で、『バス運営側に求められる義務の範囲はどこまでなのか』という問題に帰着すると思います。

一方、国家賠償法に基づく請求は、一見成り立ちそうですが、難しいでしょう。市営バス事業のような純粋な私経済作用は、同法でいう『公権力の行使』には当たらないと解されているからです」

(弁護士ドットコムニュース)

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