15502.jpg
倒壊しそうな「空き家」を強制的に解体ーー空き家対策「特別措置法」のポイントは?
2015年10月30日 11時54分

神奈川県横須賀市で、倒壊の恐れがある所有者不明の「空き家」を行政代執行で取り壊す作業が始まった。今年5月に全面施行された「空き家対策特別措置法」に基づく措置で、特措法に基づく取り壊しは全国初とみられる。

日本経済新聞の報道によれば、2012年10月、周辺住民から「屋根が落ちてきそうで危険だ」などの苦情が寄せられ、外壁も含めて倒壊の恐れがあったことから「特定空き家」と判断したそうだ。

「特定空き家」とはどのような状況をさすのだろうか。また今後、このような取り壊しは増えていくのだろうか。NPO法人「京都町並み保存協議会」代表理事で、空き家問題に取り組んでいる中島宏樹弁護士に聞いた。

神奈川県横須賀市で、倒壊の恐れがある所有者不明の「空き家」を行政代執行で取り壊す作業が始まった。今年5月に全面施行された「空き家対策特別措置法」に基づく措置で、特措法に基づく取り壊しは全国初とみられる。

日本経済新聞の報道によれば、2012年10月、周辺住民から「屋根が落ちてきそうで危険だ」などの苦情が寄せられ、外壁も含めて倒壊の恐れがあったことから「特定空き家」と判断したそうだ。

「特定空き家」とはどのような状況をさすのだろうか。また今後、このような取り壊しは増えていくのだろうか。NPO法人「京都町並み保存協議会」代表理事で、空き家問題に取り組んでいる中島宏樹弁護士に聞いた。

●「特定空き家」とはなにか?

中島弁護士によれば「特定空き家」とは、次のような特定の状態にある空き家を指す。

・(そのまま放置すれば)倒壊等、著しく保安上危険となるおそれがある

・(そのまま放置すれば)著しく衛生上有害となるおそれがある

・適切な管理が行われていないことにより、著しく景観を損なっている

・その他、周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切

具体的には「屋根が抜けている、ゴミが不法投棄されている、庭木が伸び放題で隣地にはみ出している空き家」などがあげられると、中島弁護士は指摘する。

「特定空き家については、順次、改善の助言や指導、勧告、命令がなされ、それでも改善されない場合は、行政代執行の方法により強制的に解体がなされます。その際の費用は、最終的には所有者負担となります」

●空き家の強制的「取り壊し」は増加していく

今回の取り壊しの根拠となった「空き家対策特別措置法」について、中島弁護士はどのように評価しているのだろうか。

「全国各地で制定されていた空き家条例を法律化し、国として、空き家問題の解消に向けた積極的な姿勢を明らかにしたところに意義があります。

2013年の時点で、全国で820万戸が空き家となっており、空き家率は13.5%にも上っています。しかも、今がピークではありません。一説によると、2033年には、空き家率は30%以上になるとも指摘されています。

空き家率が右肩上がりの現状においては、横須賀市の物件と同様に、行政が強制的に解体に踏み切らざるを得ない物件は増加していくものと思われます」

さらに中島弁護士は、これまで空き家問題に取り組んできた経験から「解体だけでは問題は解決しない」とも指摘する。

「空き家問題の解消は、空き家を取り壊すところにあるのではなく、空き家を有効活用するところにあると考えます。

新築着工件数が高水準で推移している反面、空き家の活用は経済的理由などにより思うように進んでいません。こうした現状を踏まえると、空き家の改修、空き家の売買、空き家の賃貸などについての公的補助を充実していくことが求められると思います」

空き家問題については、多角的なアプローチが求められている。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る