3240.jpg
ドイツに出向、残業100時間超で精神疾患に…現地版「裁量労働」の社員、労災認定
2019年05月24日 18時33分

タイヤ大手のコンチネンタルタイヤ・ジャパン(東京都品川区)の社員(40代)が精神疾患を発症し、休職したのは出向先のドイツ本国での長時間労働にあるとして、品川労働基準監督署が労災認定した。代理人が5月24日、記者会見して明らかにした。認定は3月5日付。

代理人の笠置裕亮弁護士によると、この社員はドイツで日本の裁量労働制と似た制度(信頼労働時間制)で働いていたという。出勤・退勤時刻を定めず、労働時間を労働者の自由に委ねるというものだ。

しかし、実際には裁量がなく、取引相手である日本の自動車大手からのクレーム対応などに追われていたという。

通常、労働者が海外に派遣された場合は、現地の労災制度の対象になる。しかし、日本の労災制度に比して、対象や補償内容が十分でない場合があるため、日本の制度を利用できる「特別加入」の仕組みがある。

タイヤ大手のコンチネンタルタイヤ・ジャパン(東京都品川区)の社員(40代)が精神疾患を発症し、休職したのは出向先のドイツ本国での長時間労働にあるとして、品川労働基準監督署が労災認定した。代理人が5月24日、記者会見して明らかにした。認定は3月5日付。

代理人の笠置裕亮弁護士によると、この社員はドイツで日本の裁量労働制と似た制度(信頼労働時間制)で働いていたという。出勤・退勤時刻を定めず、労働時間を労働者の自由に委ねるというものだ。

しかし、実際には裁量がなく、取引相手である日本の自動車大手からのクレーム対応などに追われていたという。

通常、労働者が海外に派遣された場合は、現地の労災制度の対象になる。しかし、日本の労災制度に比して、対象や補償内容が十分でない場合があるため、日本の制度を利用できる「特別加入」の仕組みがある。

●労働時間に厳格なドイツ、周囲は定時上がりで負担増える

この社員は2016年6月にドイツに出向。翌2017年2月以降、クレーム対応を一手に引き受けることになったという。不良品をめぐり、日本の自動車大手とトラブルになったことから、工場など社内の各部署と調整を重ねたが、十分なサポートを得られなかったそうだ。

一般にドイツの労働時間規制は厳しいと言われている。この職場でも一般社員は定時で帰ったり、上司も長期休暇を取っていたようだ。その分、ドイツ版「裁量労働」だったこの社員に業務が集中してしまったと、笠置弁護士は分析する。

労働時間も管理されていなかったため、メールやファイルの更新日付などを参考に労災申請し、発症前4カ月から3カ月にかけて、時間外労働が倍以上に増え、おおむね月100時間以上あったと認定された。

笠置弁護士は、日本で裁量労働制の対象拡大が検討されていることを念頭に、「裁量が与えられていなければ、際限のない長時間労働に従事させられてしまう」と警鐘を鳴らした。

社員側は、国籍差別などのパワハラもあったと主張。「自分の業務だけでなく、同僚の業務の負担までも担っていました」などとコメントを寄せた。

コンチネンタルタイヤ・ジャパンは「担当者が不在で事実確認ができていない。現時点でのコメントは控えたい」としている。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る