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観光施設で撮影した入場客の「写真」 勝手に出口で販売ーー肖像権の侵害じゃないの?
2016年02月08日 11時00分

昨年末のある夕刻、東京都内の有名施設で開催されていた「プラネタリウム展」を家族と訪れた主婦のユウコさん(30代)。前売り券でも1人2000円と高額だったが、会場前には15組くらいが並んでいたそうだ。

「会場の入り口脇には、展覧会名も入った看板もあって、絶好の撮影スポットでした。ところが、そこは『間隔調整のため、お写真をとらせていただいておりまーす』と、プラネタリウムに入るための人たちが、バイトらしき男性カメラマンに順番に写真を撮られていたんです。というか、そこで立ち止まらないと中に入れないようになっていました」

しかし、「これって、後で写真を買わされる観光地商法なんじゃない?」との不安がよぎったというユウコさん。案内をしていた女性に「間隔調整のためなら、私のカメラで撮影してもらえません?」と依頼したところ、「それはできません」と断られたそうだ。

自分の番になると、ユウコさんは渋々、指定位置で立ち止まって撮影されたという。カメラマンの呼びかけも無視していたため、カメラマンは「そんなにイヤなら行っていいですよ」と忌々しげな対応だった。展示会場を出ると、案の定、自分たちの写真が500円で売られていたそうだ。「本来の目的を伝えず、お金がかかることも言わず、勝手に撮影されるのは本当に不快です」と、ユウコさんの怒りはさめやらない。

こうした観光地の「勝手に撮影商法」は、他の行楽施設でも行われているが、ネットでは「肖像権の侵害ではないですか?」「売り場に、同意もなく、勝手に並べられて、他人の目にさらされる状況になっているのはおかしい」といった批判的な声が少なくない。

このように、あとで販売する目的なのに、それを伝えずに撮影し、写真を販売することは、肖像権の侵害にならないだろうか? 櫻町直樹弁護士に聞いた。

昨年末のある夕刻、東京都内の有名施設で開催されていた「プラネタリウム展」を家族と訪れた主婦のユウコさん(30代)。前売り券でも1人2000円と高額だったが、会場前には15組くらいが並んでいたそうだ。

「会場の入り口脇には、展覧会名も入った看板もあって、絶好の撮影スポットでした。ところが、そこは『間隔調整のため、お写真をとらせていただいておりまーす』と、プラネタリウムに入るための人たちが、バイトらしき男性カメラマンに順番に写真を撮られていたんです。というか、そこで立ち止まらないと中に入れないようになっていました」

しかし、「これって、後で写真を買わされる観光地商法なんじゃない?」との不安がよぎったというユウコさん。案内をしていた女性に「間隔調整のためなら、私のカメラで撮影してもらえません?」と依頼したところ、「それはできません」と断られたそうだ。

自分の番になると、ユウコさんは渋々、指定位置で立ち止まって撮影されたという。カメラマンの呼びかけも無視していたため、カメラマンは「そんなにイヤなら行っていいですよ」と忌々しげな対応だった。展示会場を出ると、案の定、自分たちの写真が500円で売られていたそうだ。「本来の目的を伝えず、お金がかかることも言わず、勝手に撮影されるのは本当に不快です」と、ユウコさんの怒りはさめやらない。

こうした観光地の「勝手に撮影商法」は、他の行楽施設でも行われているが、ネットでは「肖像権の侵害ではないですか?」「売り場に、同意もなく、勝手に並べられて、他人の目にさらされる状況になっているのはおかしい」といった批判的な声が少なくない。

このように、あとで販売する目的なのに、それを伝えずに撮影し、写真を販売することは、肖像権の侵害にならないだろうか? 櫻町直樹弁護士に聞いた。

●「肖像権」とはなにか?

「このような場合、『肖像権』を連想する人は多いかと思いますが、『肖像権』に関する法律上の明文はありません。しかし、最高裁の判例で、参考になるものがあります。

最高裁判所は、承諾を得ないで写真を撮影される行為について、『個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由を有するものというべき』といっています(最大判昭和44年12月24日)。

したがって、撮影される人の承諾を得ないで写真を撮ることは、その人の『肖像権』を侵害する可能性があります。最高裁判所は『肖像権』という言葉は用いていませんが、『みだりに容ぼう等を撮影されない自由』は『肖像権』を指すと考えてよいでしょう。

ただし、承諾のない撮影が必ず違法になるわけではありません。2005年の最高裁判決によれば、『被撮影者の社会的地位、撮影された被撮影者の活動内容、撮影の場所、撮影の目的、撮影の態様、撮影の必要性等』を総合考慮して、社会通念上、その撮影が被撮影者の受忍限度を超えないときは違法にならない、とされています(最判平成17年11月10日)」

●「撮影行為」と「写真の公表」はどう判断される?

今回のケースは、どうだろうか?

「カメラマンは、ユウコさんの家族の承諾を得ないまま、撮影しています。カメラマンの呼びかけに答えなかったからといって、『黙示に承諾していた』とは言えないと思われます。

また、ユウコさん家族はイベント観覧に訪れた一般人であること、『販売』という営利目的の撮影であったこと、撮影すべき必要性も認められないことからすれば、男性カメラマンによる撮影行為はユウコさん家族の受忍限度を超えるものとして、『肖像権』を侵害する違法なものといえるでしょう。

さらに、最高裁判所は2005年の判決のなかで、『人は、自己の容ぼう等を撮影された写真をみだりに公表されない人格的利益も有すると解するのが相当であり、人の容ぼう等の撮影が違法と評価される場合には、その容ぼう等が撮影された写真を公表する行為は・・・違法性を有するものというべき』といっています。

したがって、今回のケースのように撮影行為が違法である場合、撮影された写真を公表することも違法となります。さらに、写真を販売する行為が不特定多数の目に触れるような態様でされている場合には、『写真の公表』にあたるとして、同様に違法(肖像権の侵害)といえるでしょう」

(弁護士ドットコムニュース)

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