4318.jpg
専業主婦になった彼女と「働きバチ」の私…それぞれが失ったもの【均等法30年史・2】
2016年12月26日 00時00分

1986年に男女雇用機会均等法(以下、「均等法」)が施行され、2016年でちょうど30年を迎えた。連載の第1回では、地方出身の女性が、東京でどう生き残ったのか、その奮闘を追った。

第2回目では、管理職としての肩書きを得た女性が、何を得て、何を得られなかったのか。切実な声をお伝えしたい。(ルポライター・樋田敦子)

1986年に男女雇用機会均等法(以下、「均等法」)が施行され、2016年でちょうど30年を迎えた。連載の第1回では、地方出身の女性が、東京でどう生き残ったのか、その奮闘を追った。

第2回目では、管理職としての肩書きを得た女性が、何を得て、何を得られなかったのか。切実な声をお伝えしたい。(ルポライター・樋田敦子)

●「妊娠・出産でキャリアが分断されなかったら・・・」

ひとつの会社で仕事を続け、現在部長職の肩書きを持つ石川紀子さん(53歳)=仮名、メーカー勤務=は、先日再会した5年先輩の山田涼子さん(58歳)=仮名、専業主婦=から言われた言葉が忘れられない。山田さんは、社内初の総合職に抜擢された初の女性社員。慶應義塾大学卒で、同期の中でも際立って優秀な社員だったという。

「そんな先輩が、会社を辞めたことを今でも後悔しているというのです。退職は妊娠が理由で、当時、35歳。高年齢出産はその頃30歳でしたから、やっとできた子なので家族から仕事を辞めるように促されたということでした。『あなたが管理職になってうらやましい。妊娠・出産でキャリアが分断されなかったら、今はどうなっていたかと思うの』と話しました」

同じ部署の先輩、後輩だった時代に多くのことを涼子さんから学んだ。紀子さんは、彼女が辞めるとき、正直「もったいないなあ」と感じたという。しかし、出産しても海外出張の多い夫が育児を手伝ってくれるはずもなく、遠方に住む両親の手は借りられず、泣く泣く退社した。

●離婚、そして乳がんに・・・

石川さんとて、順風満帆な働く女性人生を歩んできたわけではない、朝夜なくがむしゃらに働いてきて、夫との離婚も経験した。「一緒にいる意味ないでしょ」と夫は告げた。子どもがいなかったので離婚は簡単に成立した。

その後は今までにも増して仕事にのめり込んだ。海外赴任も経験しある意味、エリート街道を走ってきたが、40代半ばで乳がんにかかった。

「両親はすでに介護が必要な年齢に差し掛かっていたので、心配させないように入院から手術まで、すべて一人でやりました。一生懸命仕事をしてきて、なんでガンなの。神様はなんて冷酷なんだと病院のベッドで泣きました」

病気になってからは、少しずつ働き方を変えた。無理をしない、一人で仕事を抱え込まないで部下に振った。規則正しい食事を心がけ、有休も積極的に消化した。効率の上がる働き方を考えて朝型にシフト。その結果、部署の売り上げを倍増。部長職に就いた。

「夫がいて、子どもがいる専業主婦と、夫も子どももいない働きバチの私。どちらがいいか分かりません。でもどちらでも選択できる世の中であってほしいと思います」

保育園待機児童の問題など、女性が働きやすい環境を整備しないと、出産後も働く人は増えない。それとともに、一度は妊娠・出産でキャリアを分断されても、それを救い上げ、再構築できる企業側の姿勢も必要だろう。

(弁護士ドットコムライフ)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る