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「下請法」運用基準見直しで違反事例が倍増…下請企業へのコストダウン要請に注目
2016年11月05日 09時19分

発注者側が取引上の優位な地位を利用して、不利な取引条件などを下請け会社に押し付ける「下請けいじめ」などを防ぐために、公正取引委員会(公取委)が下請け取引の適正化を進めている。

公取委は10月26日、下請法の運用基準の改正案を発表し、案についてのパブリックコメント(意見募集)を11月24日まで行う。議論のポイントを下請法に詳しい大東泰雄弁護士に聞いた。

発注者側が取引上の優位な地位を利用して、不利な取引条件などを下請け会社に押し付ける「下請けいじめ」などを防ぐために、公正取引委員会(公取委)が下請け取引の適正化を進めている。

公取委は10月26日、下請法の運用基準の改正案を発表し、案についてのパブリックコメント(意見募集)を11月24日まで行う。議論のポイントを下請法に詳しい大東泰雄弁護士に聞いた。

●「下請法コンプライアンス推進」「摘発に有用なツール」

ーー下請法が50年ぶりに見直されるといった報道もあるが、法改正ではないのか?

下請法そのものではなく、公取委が策定した運用基準(下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準)の見直しが予定されています。パブリックコメントの募集と検討が終了したあと、年内にも成案が公表される見通しです。

運用基準の改正案においては、これまで66事例しか掲載されていなかった違反行為事例が、134事例に大幅に増加されました。

また、特に親事業者が違反しやすい事例が追加されており、親事業者にとっても、下請事業者にとっても、下請法の具体的内容をよりイメージしやすいものになりました。

たとえば、親事業者が、下請事業者に対し、単位コストの低減効果がないのに、一定の納入金額を達成した場合に「達成リベート」を振り込ませることが、下請法で禁止された「減額」にあたるといったケースです。

こうした違反事例が大幅に加わったことで、事業者による下請法コンプライアンスが推進されるとともに、当局の摘発においても有用なツールになると思われます。

ーーこれまでの下請法の運用は不十分だったのか?

2015年度に公取委が行った指導件数が過去最多を更新するなど、公取委・中小企業庁は活発な摘発を行ってきました。

もっとも、下請事業者や中小企業のいっそうの保護の必要性を訴える声は根強く、安倍内閣が、「未来への投資を実現する経済対策」(2016年8月2日閣議決定)、「経済財政運営と改革の基本方針2016」(2016年年6月2日閣議決定)、日本再興戦略2016(2016年6月2日閣議決定)等において、下請法・独占禁止法の運用強化を打ち出していました。

今般の運用基準改正や、経産省の方針発表は、このような安倍内閣の政策を受けたものと考えられます。

ーー注目しているポイントはなにか?

自動車業界等を中心に、部品メーカーなどに対して「年●%コストダウンしろ」といった原価低減要請が広く行われていると考えられます。

こうした慣行の取扱いが、公表された運用基準改正案や経産省の方針の中でも、最も重要な課題になると考えています。

親事業者と下請事業者が共に繁栄するために、下請法がどのように運用されることが最も適切なのか、今後の実務の流れに注目したいと思います。

(弁護士ドットコムニュース)

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