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夫の大切な「レコード」妻が「フリマアプリ」で売った・・・取り返すことができる?
2016年02月19日 13時18分

「あれ、売っちゃったから」。東京都内で暮らす30代の男性Nさんは、妻がフリマアプリ「メルカリ」を利用して、自分の大切なアナログレコードを売ってしまったことを怒っている。

メルカリは、スマホで写真をとって、気軽に私物をネット上で売ることができるアプリだ。Nさんの妻は「家の中の物はできるだけ少ないほうがいい」と考えていて、使わなくなった物や着なくなった服を次々とメルカリで売っている。

そんな妻のターゲットが、Nさんの私物だった。Nさんは中古のアナログレコードを集めるのが趣味だが、妻は場所をとるレコードを苦々しく感じていた。妻は、ダンボールに保存されていたレコード一箱(50枚入り)を、「これはもう聴いていないだろう」と考えて、メルカリで1枚300〜500円という値段で売ってしまった。

だが、その中には、有名ジャズレーベル「ブルーノート」のオリジナル盤など、中古市場で数万円の値段がつく高価なものも含まれていた。大事なコレクションを勝手に二束三文で売られたNさんは、どうにかして取り戻したいと考えているが、どうすればいいのか。甲本晃啓弁護士に聞いた。

「あれ、売っちゃったから」。東京都内で暮らす30代の男性Nさんは、妻がフリマアプリ「メルカリ」を利用して、自分の大切なアナログレコードを売ってしまったことを怒っている。

メルカリは、スマホで写真をとって、気軽に私物をネット上で売ることができるアプリだ。Nさんの妻は「家の中の物はできるだけ少ないほうがいい」と考えていて、使わなくなった物や着なくなった服を次々とメルカリで売っている。

そんな妻のターゲットが、Nさんの私物だった。Nさんは中古のアナログレコードを集めるのが趣味だが、妻は場所をとるレコードを苦々しく感じていた。妻は、ダンボールに保存されていたレコード一箱(50枚入り)を、「これはもう聴いていないだろう」と考えて、メルカリで1枚300〜500円という値段で売ってしまった。

だが、その中には、有名ジャズレーベル「ブルーノート」のオリジナル盤など、中古市場で数万円の値段がつく高価なものも含まれていた。大事なコレクションを勝手に二束三文で売られたNさんは、どうにかして取り戻したいと考えているが、どうすればいいのか。甲本晃啓弁護士に聞いた。

●手元にあれば、引き渡しを拒むことができる

「この場合、レコードのコレクションは、夫個人の所有物です。法律上は、結婚以前から持っている物と、結婚してから自己の名義で取得した物は、個人の所有物ですから(民法786条1項)、レコードはこれにあたるでしょう。

夫婦どちらのものと決めずに購入した物は『共有』と推定されます(同条2項)。たとえば、食料品や家具、家電など、家族で使う生活用品ですね」

甲本弁護士はこのように述べる。夫の個人所有のモノを、妻が勝手に売った場合でも、売買は有効なのだろうか。

「このような売買契約も法律上有効です(『他人物売買』と呼ばれています)。オークションで落札されると、妻と落札者の間に売買契約が成立します。

妻は、商品を落札者に引渡す義務を負いますが、まだレコードが引き渡されていない段階であれば、夫は、その引き渡しを拒むことができます」

●引き渡してしまったら、取り戻すのは難しい

すでにレコードを発送したあとだとしたら、どうだろうか。

「夫は、契約当事者ではないので、売買契約を取り消したり、解除したりすることはできません。契約の当事者である妻にも、法律上の解除権はありません。レコードを引き渡した後で、その返還を受けるには、落札者の同意が必要です」

もし、相手が応じなかった場合はどうなるのか。

「その場合は、引き渡したレコードを取り戻すことは難しいでしょう。

妻と買い主の売買は他人物売買ですから、契約を結んだだけでは、レコードの所有権をNさんが失うことにはなりません。

ですが、民法には、取引(売買)の安全を図るための『即時取得』(民法192条)という制度があります。簡単にいうと、売り主にモノを処分する権限がなかったとしても、買い主が売り主を過失なく信じて取引をした場合には、その信頼を保護しましょうという制度です。

この場合、妻が夫に黙って出品しているという事情を、落札者が過失なく知らなければ、法律上は落札者が所有者となります。その裏返しとして、夫はレコードの所有権を失います」

相手が同意しない場合、Nさんはあきらめるしかないようだ。

「実際に請求するかどうかは別として、法律上は、Nさんは妻に対して、失ったレコードの損害(時価相当額)や、大切なコレクションを失ったことに起因する精神的損害について、それぞれ賠償請求ができる可能性があります(民法709条)。

なお、妻の行為は、刑法上は窃盗罪または横領罪(刑法235条・242条)に該当する行為とも評価できますが、親族相盗例(刑法244条1項)の適用を受けるため、処罰を受ける可能性はありません」

甲本弁護士はこのように分析していた。

(弁護士ドットコムニュース)

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