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高校バレー部の生徒7人が「部活仲間」の留守宅を荒らしたーー「無期停学」は妥当か?
2015年07月10日 12時50分

兵庫県西宮市の関西学院高等部のバレーボール部に所属する男子生徒7人が、同じ部の男子生徒宅に侵入して部屋を荒らしたうえ、その様子を撮影した動画をメッセージアプリ「LINE」に投稿していたことがわかった。外部からの通報で知った同校は、いじめ行為だと判断し、7人を「無期停学」処分にした。

報道によると、7人は5月上旬、被害生徒の留守宅に侵入し、そのうちの5人が生徒の部屋に入り、本棚などを倒し本を散乱させる動画を撮影した。動画は、バレーボール部の一部の生徒間で使っていた「LINE」のグループ内で公開したという。7人は一連の行為を認めており、部室で被害生徒の家の鍵を拾い、侵入したと話しているという。

このニュースに対して、ネット上では「これは警察に通報するような話ではないの?」「犯罪を犯した奴を停学で済ませるな」など、学校が出した処分を疑問視する声があがった。7人の生徒の行為は本来、どんな罪に問われるのだろうか。また、学校の処分は妥当だと言えるのだろうか。高島惇弁護士に聞いた。

兵庫県西宮市の関西学院高等部のバレーボール部に所属する男子生徒7人が、同じ部の男子生徒宅に侵入して部屋を荒らしたうえ、その様子を撮影した動画をメッセージアプリ「LINE」に投稿していたことがわかった。外部からの通報で知った同校は、いじめ行為だと判断し、7人を「無期停学」処分にした。

報道によると、7人は5月上旬、被害生徒の留守宅に侵入し、そのうちの5人が生徒の部屋に入り、本棚などを倒し本を散乱させる動画を撮影した。動画は、バレーボール部の一部の生徒間で使っていた「LINE」のグループ内で公開したという。7人は一連の行為を認めており、部室で被害生徒の家の鍵を拾い、侵入したと話しているという。

このニュースに対して、ネット上では「これは警察に通報するような話ではないの?」「犯罪を犯した奴を停学で済ませるな」など、学校が出した処分を疑問視する声があがった。7人の生徒の行為は本来、どんな罪に問われるのだろうか。また、学校の処分は妥当だと言えるのだろうか。高島惇弁護士に聞いた。

●住居侵入罪や器物損壊罪にあたる?

「まず7人の生徒の行為ですが、報道の情報を前提とする限り、犯罪が成立すると思います」

高島弁護士はこのように切り出した。

「具体的には、被害生徒に無断で、留守宅へ侵入した行為については住居侵入罪(刑法130条前段)が、部屋の本棚を倒して荒らした行為については、本の破損などがあれば器物損壊罪(刑法261条)が、それぞれ成立する余地があります」

7人の行為について、学校側は「いじめ」だったと判断し、「無期停学処分にした」と発表している。そもそも「無期停学」とはどのような処分なのだろうか? 

「無期停学処分とは、期間を定めることなく生徒の登校を禁止する処分です。無期といっても、通常1カ月程度で処分が解除される傾向にありますが、解除されずに留年してしまうケースもまれに発生しています。

ただ通常、無期停学処分は、今後も教育を施すことを前提として、生徒に対し反省を促す目的で下されます。必ずしも自主退学を促す狙いがあるわけではありません」

このように高島弁護士は説明する。

●無期停学という処分は不当ではない

「これに対し、退学処分は、1974年の最高裁判決によると、学生に改善の見込がなく、学外に排除することが教育上やむを得ないと認められる場合に限って適法になると考えられています。このように、無期停学処分については学校側に広範な裁量権が委ねられているのですが、退学処分については、限定的な場合にのみ許容されているのです。

本件において、『7人の生徒に改善の見込みがある』と学校側が判断したのであれば、退学処分ではなく無期停学処分を選択することも、学校の裁量権の範囲内にあると考えます。今回の行為のみに着目すれば、無期停学は決して不当な処分ではないと思います」

7人の行為は「いじめ」だから、無期停学という処分は軽いのではないかという意見については、どう思うか?

「もしそのような意見があるのであれば、それはやや極端かもしれません。

いじめの定義は、『当該生徒が、一定の人間関係のある者から、心理的、物理的な攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛を感じているもの』と考えられています。すなわち、その生徒が精神的な苦痛を感じている場合には、具体的にどんな行為が行われていたかを問わず、『いじめ』に該当してしまう余地があるのです。

しかし、万が一、7人の生徒が以前から同様の行為を行っていた場合、被害生徒への『悪質ないじめ』と評価する余地が生じます。状況しだいで、より重い処分を検討しなければならないでしょう。

処分の妥当性を判断するには、今回の行為のみに着目するのではなく、事件に至った経緯を十分調査して、被害の再発防止策を検討することが必要不可欠ではないでしょうか」

(弁護士ドットコムニュース)

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