51.jpg
「あと何十年、こんなに苦しまなければいけないのか」 日本人女性と結婚しても「在留許可」認められず…スリランカ人男性の絶望
2024年12月21日 09時26分
#在留特別許可 #難民 #スリランカ

「いつまで苦しめるのか・・・もう20年も日本にいるのに・・・」。そう悔しさを滲ませ、苦悶の表情でつぶやいたのは、スリランカ国籍のナビンさんだ。

ナビンさんは現在、難民認定や在留特別許可を退けた処分の取り消しを求めて裁判を起こしており、この日(12月17日)は、東京地裁で判決があった。

この裁判には注目が集まり、結果を見届けるために60人以上の支援者が詰めかけたが、法廷の席は50人まで。抽選が外れて傍聴できない人もいた。だが、東京地裁はいずれの請求も棄却した。

判決の言い渡しが終わり、ナビンさんと日本人妻・なおみさんは、東京・霞が関の弁護士会館のホールに向かい、集まった支援者たちの前で報告した。

「残念な結果が出て言葉が出ない。この判決で感じたのは20年もこの国でこんなに苦しんできたのに、あと何十年こんなに苦しまなければいけないのか。どうすればいいのか、考えられない」

ナビンさんの絶望は計り知れない。

「いつまで苦しめるのか・・・もう20年も日本にいるのに・・・」。そう悔しさを滲ませ、苦悶の表情でつぶやいたのは、スリランカ国籍のナビンさんだ。

ナビンさんは現在、難民認定や在留特別許可を退けた処分の取り消しを求めて裁判を起こしており、この日(12月17日)は、東京地裁で判決があった。

この裁判には注目が集まり、結果を見届けるために60人以上の支援者が詰めかけたが、法廷の席は50人まで。抽選が外れて傍聴できない人もいた。だが、東京地裁はいずれの請求も棄却した。

判決の言い渡しが終わり、ナビンさんと日本人妻・なおみさんは、東京・霞が関の弁護士会館のホールに向かい、集まった支援者たちの前で報告した。

「残念な結果が出て言葉が出ない。この判決で感じたのは20年もこの国でこんなに苦しんできたのに、あと何十年こんなに苦しまなければいけないのか。どうすればいいのか、考えられない」

ナビンさんの絶望は計り知れない。

●『おしん』で日本文化に惹きつけられた

法務省側の主張はこうだ。

・難民に関しては、ナビンさんは2004年に逃げてきたので、現在は帰国しても、必ずしも危険とは言えない。だから、難民と認められない。

・在留特別許可に関しては、オーバーステイの期間が長いことが主な理由として認められない。在留資格がなくなってから結婚したので、いずれは帰国することがわかっていたはず。なので保護する必要がない。

・よって、法務大臣等の判断は違法ではない。

ナビンさんは、まだスリランカに住んでいた子どものころ、テレビで流れた日本のドラマ『おしん』を見て、独特の屋根の造りや着物など、日本文化に感銘を受け、惹きつけられた。

以来、日本に憧れを抱き、「大人になったら、必ずいつか日本に行き、暮らしたい」。そして、日本人女性と結婚することをずっと夢見ていた。

●対立政党の支持者から襲われ「大ケガ」したことも

母国スリランカでは、一部の政治家たちが私腹を肥やし、国民が苦しい生活を余儀なくされるといい、政府に対する不満を言うことすら許されないという。

ナビンさんは2001年から政治活動を始めた。対立政党の支持者から襲われ大ケガをしたこともある。

「いよいよ国を出なくては命にかかわる」と判断したナビンさんは2004年、留学生として憧れの地、日本へ逃れることを決意した。

いざ来てみると、『おしん』のような風景はなく、近代的だったことに驚いた。

埼玉県・JR蕨駅の近くにドラマのような古い町並みを見つけて、嫌なことがあるとそこへ行き、その古風な建物を見るととても落ち着いたという。

●授業料を持ち逃げされるトラブル

その後、思いもよらぬトラブルが起きた。

仲介人に渡していた1年分の授業料の半分を待ち逃げされてしまったのだ。授業料が未納の状態になり、学校にいられなくなってしまう。

このままでは在留資格がなくなってしまうと焦りを感じたナビンさんは、入管に相談しに行った。

ところが、きちんと対応してもらえず、職員に「専門家に聞いてください」と冷たくあしらわれるだけだったという。

「このときは日本語もよくわからなかったし、専門家とはなんなのかもわからなかった。今にして思えば、弁護士のことだったと思うが、もっと丁寧に対応してほしかった」

どうしたら良いのか模索しているうちに、2005年、在留資格を失ってしまった。

実は、その前に、なおみさんと出会い、結婚の約束をしていたが、当時、なおみさんはシングルマザーで子育てが大変だったので、「もう少し子どもが成長して落ち着いてから結婚したい」と言い、ナビンさんも納得していた。

二人は2016年に入籍して、今年で結婚8年目になる。だが、ナビンさんには配偶者としてのビザも出ていない。

●「ビザが切れたからといって私の気持ちは変わらない」

画像タイトル 代理人と記者会見にのぞむナビンさんたち

判決後の記者会見で、ナビンさんの代理人をつとめた浦城知子弁護士はこう語った。

「令和5年に入管法が改定されたが、在留特別許可にあたっては日本人との婚姻関係、家族の状況について十分に配慮したうえですべきであるという参議院の付帯決議が十分に反映されていない。仮放免や収容されても、それを乗り越えて夫婦生活を続けているのに、尊重されない結果が残念でならない」

なおみさんは、裁判の結果に暗い表情を見せていたが、それでも変わらぬナビンさんへの想いと、あきらめないという固い意思を示した。

「高望みをしているわけではない。普通の生活をしたいだけ。ビザが切れたからといって私の気持ちは変わらない。この人の人柄を愛している。

私が仕事をしながら彼を支え続け、精神的にも肉体的にも大変でも、自分がこの人と一緒にいたいと選んだ。在特は与えられるべき人に与えられていない。与えてほしいと願っている」

今後、ナビンさんが控訴して、二人は高裁でたたかっていくことになる。今度こそ、勝訴するために多くの人々の応援を必要としている。(ライター・織田朝日)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る