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堺市のコンビニ成人雑誌「目隠し」は憲法違反? 「表現の自由」の観点から考える
2016年04月07日 13時12分

コンビニの成人向け雑誌の表紙を「目隠し」する大阪府堺市の取り組みをめぐって、市と出版業界の意見が対立している。この取り組みは、堺市とファミリーマートが協定を結び、3月16日に始まったもので、カバーを装着すると、表紙の半分程度が見えなくなる。


この取り組み対して、日本雑誌協会と日本書籍出版協会は、「成人に対する図書選択の自由を阻害する」などとして、憲法で保障された「表現の自由」に触れる可能性があると主張している。


一方の堺市は、協定が企業との自主的な取り決めであることを理由に、違憲にはならないとしている。しかし、協会側はこれについても、堺市がカバーの費用などで95万円を計上していることから、「公権力が介入した事実上の規制だ」と反発している。


今回の対立をどうみればいいのか。作花知志弁護士に聞いた。

コンビニの成人向け雑誌の表紙を「目隠し」する大阪府堺市の取り組みをめぐって、市と出版業界の意見が対立している。この取り組みは、堺市とファミリーマートが協定を結び、3月16日に始まったもので、カバーを装着すると、表紙の半分程度が見えなくなる。


この取り組み対して、日本雑誌協会と日本書籍出版協会は、「成人に対する図書選択の自由を阻害する」などとして、憲法で保障された「表現の自由」に触れる可能性があると主張している。


一方の堺市は、協定が企業との自主的な取り決めであることを理由に、違憲にはならないとしている。しかし、協会側はこれについても、堺市がカバーの費用などで95万円を計上していることから、「公権力が介入した事実上の規制だ」と反発している。


今回の対立をどうみればいいのか。作花知志弁護士に聞いた。

●「過度に広範な規制として許されない」とされる可能性


「本件は『青少年の健全育成』を目的としている点が、通常の表現の自由の問題と異なります。


『青少年の健全育成』自体は、社会が実現を希望する合理的な目的であり、その目的のためであれば、出版業者の表現の自由は一定限度制約を受けてもやむを得ない、とする解釈が最高裁判決(1989年9月19日)などによって採用されています」


ということは、今回の目隠しカバーも仕方がないのか。

「ただし、最高裁で争われたのは、自動販売機での成人向け雑誌の販売禁止についてでした。


自販機では青少年が人目を気にせずに成人向け雑誌を買えます。そこでの販売を禁止することは青少年の健全な育成という社会的目的に合致しますし、自販機で売れなくても、出版業者は書店など、ほかの販売方法を有していることが合憲の理由とされています。

 最高裁判例と本件とを比較すると、本件ではコンビニという対面販売を行う場での『規制』であり、自販機の場合と比べ、表現の自由への制限を認める必要性はそう高くないはずです。


さらに言うと、成人向け雑誌は厳密な定義が難しく、本来目隠しが不要な雑誌にまで目隠しがされる危険もあると思います。


また、今回の『目隠し』については、大阪府青少年健全育成条例に規定がないということですので、通常の憲法解釈により、過度に広範な規制として許されない、とされる可能性があります」

●「堺市側がかなり苦しい立場」


堺市は、自主的な協定であることを理由に、条例や憲法の逸脱にはならないと主張している。この点についてはどうだろうか。


「『協定』であっても、仮に出版業者が国家賠償法を根拠として、堺市とコンビニの共同不法行為であるという主張を行えば、両者が協定を結んで権利侵害を行ったという理由で違法とされる可能性があります。


また、堺市が公金でつくったカバーを無償提供しているということですので、住民訴訟によって、その公金の支出が憲法違反で違法であるとされる可能性も生じます。


このように、これまでの憲法判例の立場などからすると、今回の件では堺市側がかなり苦しい立場にあるのではないかと考えています」

対象が成人向け雑誌ということで、子育て世代などからは堺市を支持する声もあるが。


「『良くない表現があるのだから隠せばよい』という考えに対し、『良くない表現だと考える理由を表現することで、その表現は自然に消えるはずである』とするのが、アメリカの著名なホームズ裁判官が唱えた『思想の自由市場論』です。表現の自由に対する問題は、本来そのような観点から解決が図られるべきだと私は考えています」


作花弁護士はこのように述べていた。

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