5400.jpg
シュレッダー係1年「ほぼ無の境地」…アリさん「引越社」労働問題、男性従業員の心境
2016年05月09日 15時56分

「アリさんマーク」で知られる引越社のグループ会社で、一日中立ちっぱなしの「シュレッダー係」に異動させられた30代男性の労働状況に迫るドキュメンタリー映画「アリ地獄天国(仮)」(土屋トカチ監督)が現在、制作されている。5月8日には、土屋監督と男性本人、代理人弁護士らが出演するトークイベントが東京・阿佐ヶ谷のライブハウスであり、男性が現在の心境を語った。

「アリさんマーク」で知られる引越社のグループ会社で、一日中立ちっぱなしの「シュレッダー係」に異動させられた30代男性の労働状況に迫るドキュメンタリー映画「アリ地獄天国(仮)」(土屋トカチ監督)が現在、制作されている。5月8日には、土屋監督と男性本人、代理人弁護士らが出演するトークイベントが東京・阿佐ヶ谷のライブハウスであり、男性が現在の心境を語った。

●今も「シュレッダー係」のまま

男性は2011年、引越社関東(東京)に入社したが、長時間労働にもかかわらず、残業代が支払われなかったという。さらに、昨年1月に営業車の運転中に車両事故を起こした際、会社から48万円の弁償代を請求されたという。

男性は昨年3月、未払い残業代や弁償金返還などを求めて、個人で入れる労働組合「プレカリアートユニオン」に加入した。ところが、これをきっかけに、営業職から「アポイント部」に配置転換。さらに、昨年6月には、一日中立ちっぱなしの「シュレッダー係」に異動を命じられた。

昨年7月、男性は命令無効や未払い残業代などを求めて訴訟を起こしたが、懲戒解雇された。さらに、引越社のグループ全店には、男性の氏名と顔写真入りで、解雇理由を「罪状」と書いた貼り紙を掲示されるなどしたそうだ。その後、解雇は撤回されて復職したが、今も「シュレッダー係」のままだ。

●「シュレッダー係に異動する人事はあってはならないこと」

この日のイベントでは、現在も取材・制作が続いているドキュメンタリー映画が上映された。約30分の映像には、男性が加入する労働組合が引越社関東・東京本社前で抗議活動をおこなったときの様子や、男性がシュレッダーのゴミを捨てに行くシーン、男性の家族のエピソードなどが映し出された。

シュレッダー係への異動を命じられてからもうすぐ1年を迎える男性は上映後、「客観的にもひどい」と感想を述べた。また、「自分にとって、仕事は達成感や社会貢献が含まれるが、今はお金を稼ぐだけの労働だ。ほとんど無の境地でシュレッダーをやっている」と打ち明けた。このゴールデン・ウィークもほとんど休みをとれなかったそうだ。

男性の代理人をつとめる大久保修一弁護士は「シュレッダー係に異動する人事や、従業員に弁償金を支払わせることはあってはならないこと。今後の裁判で、会社の違法な部分をあぶり出していく」と語った。

プレカリアートユニオンの清水直子委員長は「引越社は、働いている人からお金を取り上げるというやり方で安い価格設定をしてダンピング競争を加速させている。その部分も含めて改めさせて、引越業界全体に変化をもたらしたい」と強調していた。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る