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豊胸手術、ジェル注入で健康被害 「実施すべきでない」学会が共同声明
2019年04月25日 17時08分

非吸収性充填剤を注入する美容医療の豊胸手術で合併症被害が相次いでいるとして、一般社団法人日本美容外科学会(JSAPS、大慈弥裕之理事長)など4団体が4月25日、「安全性が証明されるまで実施するべきではない」と訴える共同声明を発表した。

東京・霞が関の厚労省記者クラブで会見した大慈弥理事長は、「合併症の多くは、術後5年以上経過してから発症する。必ず定期的に施術したクリニックで診察を受け、おかしいと思った時にはすぐ治療を受けてほしい」と話した。

非吸収性充填剤を注入する美容医療の豊胸手術で合併症被害が相次いでいるとして、一般社団法人日本美容外科学会(JSAPS、大慈弥裕之理事長)など4団体が4月25日、「安全性が証明されるまで実施するべきではない」と訴える共同声明を発表した。

東京・霞が関の厚労省記者クラブで会見した大慈弥理事長は、「合併症の多くは、術後5年以上経過してから発症する。必ず定期的に施術したクリニックで診察を受け、おかしいと思った時にはすぐ治療を受けてほしい」と話した。

●ジェル状の充填材が、胸の真ん中まで移動

声明を出したのは、JSAPS、一般社団法人日本形成外科学会、日本美容外科学会(JSAS)、公益社団法人日本美容医療協会の4団体。

豊胸手術には、シリコンの塊を挿入する「シリコンインプラント」、お腹などの脂肪を乳房に注入する「脂肪注入」、ヒアルロン酸や化学物質などジェル状の素材を注入する「充填剤注入」などの方法がある。

中でも「充填剤注入」は注射器で胸の周りから注入するだけと手軽なため、多くのクリニックで行われており、学会が2017年に行った「全国美容医療実態調査」でも同年の豊胸手術の約46%をしめた。

大慈弥理事長によると、日本では1940年代後期より充填材注入が導入され、50年代からはゲル状シリコンが用いられるようになった。しかし、経過とともに液状のワセリンなどが皮膚に染み出して赤くなるといった合併症が報告され、60年代後期からはシリコンインプラントを手術で挿入する方法が主流となったという。

世界ではシリコンインプラントと脂肪注入が標準的な治療となっている。しかし、日本では90年代後期より、再び充填材注入による豊胸術が行われるようになった。ジェル状の充填材が、胸の真ん中に移動したり、胸の下に下がったり、脇まで侵入したりする事例の報告があった。

●「長期的な安全性が確認されているものはない」

日本美容医療協会の青木律理事長は「注射で注入しているタイプで、長期的な安全性が確認されているものはない」と指摘。「医療機関によっては、充填剤の『アクアフィリング』を『ほとんど水だから安全です』とうたっているところもある。定期的にフォローしてくれる医療機関を選び、医師から十分な説明を受けた上で、判断してほしい」と訴えた。

また、塩谷信幸・北里大学名誉教授は「日本は自由診療の場合、未承認医薬品や医療機器を個人輸入して使用することが認められている。医師免許を持っていれば、自己責任で何をしてもいいのか。医師の裁量権も考えながら、なるべく承認を取るように行政とも議論したい」と話した。

声明は各学会の会員に周知し、今後、ジェル状の充填剤の使用中止をうながすガイドライン策定を目指している。

(弁護士ドットコムニュース)

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