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検察庁内の噂は"海外"にも…性暴力訴えた女性検事への二次加害、元同僚が証言
2025年06月13日 11時18分
#検察不祥事 #大阪地検 #大阪高検 #二次加害

大阪地方検察庁のトップだった北川健太郎氏による部下への性暴力事件をめぐって、被害をうったえた女性検事Aさんに関する誹謗中傷やうわさ話が北川氏の逮捕直後から検察庁内で広まっていたことがわかった。

今年3月まで検察官として勤務していた検察庁の元職員が取材に応じ、在職時に「被害者の方が北川氏にラブラブだった」という事実無根のうわさを聞いたことがあったと明かした。

被害者に対する「二次加害」について、検察庁が十分な対策を取らなかったとして、Aさんは「組織として被害者を軽視する実態がある」と第三者委員会による検証を求めている。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)

大阪地方検察庁のトップだった北川健太郎氏による部下への性暴力事件をめぐって、被害をうったえた女性検事Aさんに関する誹謗中傷やうわさ話が北川氏の逮捕直後から検察庁内で広まっていたことがわかった。

今年3月まで検察官として勤務していた検察庁の元職員が取材に応じ、在職時に「被害者の方が北川氏にラブラブだった」という事実無根のうわさを聞いたことがあったと明かした。

被害者に対する「二次加害」について、検察庁が十分な対策を取らなかったとして、Aさんは「組織として被害者を軽視する実態がある」と第三者委員会による検証を求めている。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)

●北川氏は無罪主張、情報漏洩の副検事は不起訴に

北川氏は大阪地検のトップである検事正だった2018年9月、当時住んでいた大阪市の官舎で、部下のAさんに性的暴行を加えたとされる。

Aさんは5年半後が経った2024年春に被害を申告。北川氏は同年6月に準強制性交の疑いで逮捕され、その後、起訴された。

同年10月に大阪地裁であった初公判で、北川氏は起訴内容を認めたが、その後、無罪主張に転じた。

事件をめぐっては、副検事の女性が捜査情報やAさんに関する情報を北川氏側や他人に漏らしたとして、Aさんは、2024年10月、国家公務員法違反や名誉毀損の疑いで副検事を刑事告訴。

大阪高等検察庁は、今年3月、この副検事を不起訴処分にしたうえで、最も軽い「戒告」の懲戒処分にした。

報道によると、不起訴にした理由について大阪高検は、副検事が被害者の名前を伝えたのは特定かつ少人数で、別々の機会だったなどと報道各社に説明したとされる。

画像タイトル 大阪地検トップによる性犯罪事件の経緯(弁護士ドットコムニュース作成)

●北川氏の逮捕から1〜2週間、海外までうわさ広まる

今回、弁護士ドットコムニュースの取材に応じたのは、2025年3月で大阪高検を退職した元検察官の田中嘉寿子(かずこ)さん。

田中さんは北川氏とAさんの2人と同じ職場で働いたことがあり、それぞれの仕事ぶりや人となりを知る人物だ。

田中さんは2022年9月から2024年9月まで、出向でオランダのハーグに住んでいた。北川氏が逮捕されたニュースを知って「本当にびっくりした」という。

このとき、田中さんはまだ、被害者がAさんであることを知らなかった。

一方で、北川氏については、それまで上司として多くのことを学ばせてもらったという感謝の気持ちがあり、北川氏が女性にセクハラをしたといった話も一切聞いたことがなかったため、「はじめは何が何だか理解できなかった」と振り返る。

北川氏が逮捕されてから1〜2週間が経ったころ、田中さんは東京にいる知り合いの検察官から次のような話を聞いたという。

<真偽は不明だが、元々は被害者の方が北川さんをものすごく慕っていて、ラブラブと言い、飲み会のセッティングを積極的にしてもらった経緯があるようだ。北川さんを知る人たちは困惑している>

つまり、北川氏が起訴される前の段階で、すでに東京の検察関係者にまで事実無根のうわさ話が広まっていたことになる。

画像タイトル 2025年3月まで大阪高検の検察官だった田中嘉寿子さん(2025年5月21日、東京都内で、弁護士ドットコム撮影)

●被害者がAさんと知り「うわさは嘘」と確信

田中さんは状況を飲み込めないまま、2024年9月に帰国。すぐに認識を一変させる出来事があった。

大阪高検での勤務を再開した10月、Aさんから「お会いしたい」と連絡があり、仕事部屋で久しぶりに対面した。

憔悴しきったその姿を見て「何があったの?」と尋ねると、Aさんから「北川事件の被害者は私なんです」と明かされた。

性犯罪捜査の経験が豊富で、関連の著書もある田中さんは、Aさんが話す当時の状況やその後の経緯が当事者にしか語れない一貫性のあるもので、裁判であれば信用性が高いと評価される内容だと感じられたため、「前に聞いたうわさは真っ赤な嘘だった」と確信したという。

画像タイトル 日本外国特派員協会で記者会見を開いた女性検事Aさん(2025年5月21日、弁護士ドットコム撮影)

●検察庁内で影響力を持っていた北川氏

社会正義の実現を目指すはずの検察庁で、なぜ被害をうったえた側への誹謗中傷や根拠のないうわさが広まったのか。

考えられる事情の一つとして、田中さんは次のように説明する。

「北川氏には歴代の検事総長、現職の幹部など検察幹部に多くの知り合いがいて、検察内部で絶大な影響力を持っていました。

そうした北川氏の人間関係のつながりが、彼に有利な情報が広まりやすい状況を生んだのかもしれません。Aさんの人となりを知る人間以外は、北川氏に同情しやすい状況になってしまったのだと思います」

画像タイトル 大阪高検や大阪地検が入る庁舎(弁護士ドットコムニュース撮影)

●「Aさんが虚偽供述する動機、まったくない」

そもそも、北川氏とAさんとの間には圧倒的な立場の差があった。また、被害を申告するまでに5年以上の歳月が経っている。さらには、返す必要のない"賠償金"をAさんは北川氏につき返したとも明かしている。

こうしたAさんが置かれてきた状況を踏まえたうえで、田中さんはこう強調した。

「何より彼女には虚偽供述をする動機がまったくありません。北川氏を告発して良いことなど一つもない。検察官としてのキャリアが潰れるに等しく、マイナスのことしかありません。

特に北川氏は、いずれ検察のトップ4に入る大阪高検の検事長(高検のトップ)になることが確実視されていた人物です。そんな人に逆らって良いことは何もないのです。

『地位を利用した性犯罪が起こる職場の環境に問題がある』という自覚を検察庁が持たなければ、今回のような事件を根絶することはできません」

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