6256.jpg
余命宣告を受けた「妹」、夫の不倫発覚…慰謝料を姉に生前贈与することは可能か?
2017年07月05日 10時05分

余命宣告を受けた妹の財産を、姉に生前贈与できるのか、という質問が、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに寄せられました。相談を寄せた女性によれば、「妹が余命宣告(余命1年程度)を受けました。同時に旦那の不貞が発覚し、離婚も考えています」という状況です。妹夫婦には、子どもはおらず、両親はともに健在です。

妹は、生命保険の受取人を姉に変更し、離婚で夫から受け取る予定の慰謝料や財産の全てを、女性(姉)に譲りたいと考えているそうです。ただ、女性には「借金があり、早急にお金が必要な状況」だとして、生前贈与を考えています。

このような場合、生前贈与を受けるためには、どのような手続きが必要なのでしょうか。また、もし離婚に妹の夫が同意しなかった場合には、どうなるのでしょうか。加藤寛崇弁護士に聞きました。

余命宣告を受けた妹の財産を、姉に生前贈与できるのか、という質問が、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに寄せられました。相談を寄せた女性によれば、「妹が余命宣告(余命1年程度)を受けました。同時に旦那の不貞が発覚し、離婚も考えています」という状況です。妹夫婦には、子どもはおらず、両親はともに健在です。

妹は、生命保険の受取人を姉に変更し、離婚で夫から受け取る予定の慰謝料や財産の全てを、女性(姉)に譲りたいと考えているそうです。ただ、女性には「借金があり、早急にお金が必要な状況」だとして、生前贈与を考えています。

このような場合、生前贈与を受けるためには、どのような手続きが必要なのでしょうか。また、もし離婚に妹の夫が同意しなかった場合には、どうなるのでしょうか。加藤寛崇弁護士に聞きました。

●検討するべきポイントとは?

「本件では、『離婚で夫から受け取る予定の慰謝料や財産』を姉に譲渡したいということです。(1)譲渡できる財産(権利)が存在するかどうか、(2)譲渡する場合の手続を順に検討します。

もっとも、本件で最も重要なのは、妹が離婚が成立してから亡くなるのか離婚前に亡くなってしまうかどうかです。この見通しによってとるべき対応は大きく変わってきます」

●譲渡できる財産は存在する?

まず1点目の「譲渡できる財産が存在するかどうか」。この点については、どうだろうか。

「譲渡できる財産は、存在します。

夫の不貞行為が発覚したのですから、妹は夫に対する慰謝料請求権を持ちます。さらに、離婚すれば、婚姻後に夫婦で築いた財産の分与を請求する権利(財産分与請求権)を持ちます」

離婚が成立する前に亡くなった場合には、どうだろうか。

「慰謝料請求権はいつでも第三者に譲渡できます。生前、姉に慰謝料請求権を譲渡しておけば、そのまま請求権は姉のもとに残されます。

なお、財産分与請求権はあくまでも離婚の成立で発生する権利なので、離婚前に譲渡はできないことになります。離婚することなく妹が亡くなった場合には、財産分与請求権は発生しないままですので、生前贈与も相続もできません」

離婚していなければ、妹の財産は夫が相続してしまうのか。

「離婚が成立していないまま妹が亡くなった場合には、離婚の裁判中などであっても、夫が法定相続分どおりに相続します」

●生前贈与の手続きはどうなっている?

なお、生前贈与はどのような手続きが必要なのか。

「生前贈与をするために特別な手続は必要ありません。慰謝料請求権については、妹が夫に対し、姉に慰謝料請求権を譲渡した旨の通知をすればそれで足ります。

離婚は成立したものの財産分与がまだだという状態であれば、財産分与請求権を妹から姉に譲渡することは可能です。その場合は、慰謝料請求権と同様に譲渡の通知をすれば足ります。

ただし、死亡後に譲渡の事実を争われないために、生前贈与をした合意書や譲渡通知はきちんとした形で残すべきなので、弁護士に相談された方がいいでしょう」

●贈与税はどうなる?

今回、姉は早急に現金が欲しいために生前贈与を考えている。しかし税金面でいえば、死後に相続するのと生前贈与とでは、違いはないのだろうか。

「一般には、相続よりも贈与の方が税金が高額になるので、離婚が無事にできたのであれば、妹が姉に財産を残す遺言を書いて、相続を待つ方が税金面では有利です。

なお、仮に妹の夫が妹の余命を知っているのであれば、夫としては財産分与をしたくないでしょうから、離婚に応じずに引き延ばすことを選択するでしょう。その場合には『妹名義の財産は姉に譲渡する』との遺言を書いておくなど、夫の思い通りにさせない策を講じるべきです」

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る