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「二日酔い」でクビになったJリーガー 「一般企業」のサラリーマンだったら?
2013年05月31日 14時06分

プロサッカー・Jリーグの札幌コンサドーレでプレーしていた外国人選手が「二日酔い」のためにクビになった。チームから契約解除を告げられたのは、「テレ」こと、マルシオ・アウベス・ドス・サントス選手だ。

スポーツ報知などの報道によれば、5月6日の練習にテレが二日酔いであらわれたことがきっかけだった。ボール回しが満足にできない状態だったため、コーチに退場を命じられ、事情聴取ののち10日に契約解除が伝えられた。練習当日の朝までススキノで飲んでいたのが原因だったという。

二日酔いの選手をクビにするのは、風紀の乱れに厳しいスポーツ界だからこその対応とも考えられる。では、日本の一般企業において、二日酔いで出社したことを理由に社員を解雇するのは、法的に問題ないのだろうか。コンサドーレが本拠を置く札幌で開業する大久保誠弁護士に聞いた。

●労働者を解雇するためには、段階を踏む必要がある

「労働者を解雇するためには、社会一般からみて妥当な客観的・合理的理由、すなわち使用者の独断でなく、誰の目からみても解雇されても仕方ないと思わせる客観的な事実に基づくことが必要です」

このように述べたうえで、大久保弁護士は次のように説明する。

「心身の不調・故障、能力・意欲の不足・欠如等の場合は、労働契約の目的を達しないとして、『普通解雇』が認められます。さらに、重大な刑事事件を起こす、背任行為を行う、職場の秩序・規律を著しく乱すなどの場合は、使用者からの信頼が失われても仕方のないことをしたとして、『懲戒解雇』も認められます」

では、「二日酔い」で出社した場合は、どうなのだろうか?

「二日酔いで出社したというのは、それが労働意欲の不足・欠如と言えれば『普通解雇』が、それを超えて職場の秩序・規律を著しく乱すと言える場合は『懲戒解雇』が認められるでしょう。

しかし、二日酔いでの出社が1回だけにとどまる場合は、自動車の運転手や電車の運転手など多数の人命の安全に直接かかわる職種であって、二日酔いで運転業務に当たった場合を除いて、どちらの解雇も認められません」

つまり、初めて「二日酔い」で出社した社員をいきなりクビにするというのは、よほどのことがない限り許されないというわけだ。

「解雇は労働者にとって不利益処分の最たるものですから、段階を踏む必要があります。注意・指導を何回も繰り返したにもかかわらず、態度が改められないで、二日酔いでの出社を繰り返した場合でなければ、解雇は認められません」

成績や生活態度しだいで簡単にクビになってしまうプロスポーツの世界とは違い、一般企業では、「二日酔いの出社」を一度やったくらいでは、いきなり解雇されることはなさそうだ。しかし、確実に上司や同僚の心証は悪くなるので、飲みすぎには注意したほうがいいだろう。

(弁護士ドットコムニュース)

プロサッカー・Jリーグの札幌コンサドーレでプレーしていた外国人選手が「二日酔い」のためにクビになった。チームから契約解除を告げられたのは、「テレ」こと、マルシオ・アウベス・ドス・サントス選手だ。

スポーツ報知などの報道によれば、5月6日の練習にテレが二日酔いであらわれたことがきっかけだった。ボール回しが満足にできない状態だったため、コーチに退場を命じられ、事情聴取ののち10日に契約解除が伝えられた。練習当日の朝までススキノで飲んでいたのが原因だったという。

二日酔いの選手をクビにするのは、風紀の乱れに厳しいスポーツ界だからこその対応とも考えられる。では、日本の一般企業において、二日酔いで出社したことを理由に社員を解雇するのは、法的に問題ないのだろうか。コンサドーレが本拠を置く札幌で開業する大久保誠弁護士に聞いた。

●労働者を解雇するためには、段階を踏む必要がある

「労働者を解雇するためには、社会一般からみて妥当な客観的・合理的理由、すなわち使用者の独断でなく、誰の目からみても解雇されても仕方ないと思わせる客観的な事実に基づくことが必要です」

このように述べたうえで、大久保弁護士は次のように説明する。

「心身の不調・故障、能力・意欲の不足・欠如等の場合は、労働契約の目的を達しないとして、『普通解雇』が認められます。さらに、重大な刑事事件を起こす、背任行為を行う、職場の秩序・規律を著しく乱すなどの場合は、使用者からの信頼が失われても仕方のないことをしたとして、『懲戒解雇』も認められます」

では、「二日酔い」で出社した場合は、どうなのだろうか?

「二日酔いで出社したというのは、それが労働意欲の不足・欠如と言えれば『普通解雇』が、それを超えて職場の秩序・規律を著しく乱すと言える場合は『懲戒解雇』が認められるでしょう。

しかし、二日酔いでの出社が1回だけにとどまる場合は、自動車の運転手や電車の運転手など多数の人命の安全に直接かかわる職種であって、二日酔いで運転業務に当たった場合を除いて、どちらの解雇も認められません」

つまり、初めて「二日酔い」で出社した社員をいきなりクビにするというのは、よほどのことがない限り許されないというわけだ。

「解雇は労働者にとって不利益処分の最たるものですから、段階を踏む必要があります。注意・指導を何回も繰り返したにもかかわらず、態度が改められないで、二日酔いでの出社を繰り返した場合でなければ、解雇は認められません」

成績や生活態度しだいで簡単にクビになってしまうプロスポーツの世界とは違い、一般企業では、「二日酔いの出社」を一度やったくらいでは、いきなり解雇されることはなさそうだ。しかし、確実に上司や同僚の心証は悪くなるので、飲みすぎには注意したほうがいいだろう。

(弁護士ドットコムニュース)

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