7357.jpg
男でも女でもない――海外の裁判で認められた「中立的な性別」 日本での可能性は?
2014年04月23日 11時13分

「私は男でも女でもない」。そんな訴えをオーストラリアの最高裁が受け入れ、男性でも女性でもない「中立的な性別」での住民登録を認めたとして、話題になっている。

判決文によると、裁判をしたのは男性として生まれたノリー氏で、1989年に性別適合手術(性転換手術)を受けたが、それでも自身の性的不明確さは解決されなかったとして、2009年に「非特定(non-specific)」として登録されるよう申請。ニューサウスウェールズ州政府が拒否したことから、裁判になっていた。

これまで、性別といえば「男」か「女」だけだったが、GID(性同一性障害)に対する性別適合手術が一般化してきたいま、自分自身を「どちらでもない状態」と考える人は少なからず存在しそうだ。インドでも先日、最高裁が「第三の性」を認めたと報道があった。

もし、日本で同様の訴えを起こしたら、戸籍に「男」「女」以外の性別を書いてもらえる可能性はあるのだろうか。性的マイノリティの問題に積極的に取り組んでいる南和行弁護士に聞いた。

「私は男でも女でもない」。そんな訴えをオーストラリアの最高裁が受け入れ、男性でも女性でもない「中立的な性別」での住民登録を認めたとして、話題になっている。

判決文によると、裁判をしたのは男性として生まれたノリー氏で、1989年に性別適合手術(性転換手術)を受けたが、それでも自身の性的不明確さは解決されなかったとして、2009年に「非特定(non-specific)」として登録されるよう申請。ニューサウスウェールズ州政府が拒否したことから、裁判になっていた。

これまで、性別といえば「男」か「女」だけだったが、GID(性同一性障害)に対する性別適合手術が一般化してきたいま、自分自身を「どちらでもない状態」と考える人は少なからず存在しそうだ。インドでも先日、最高裁が「第三の性」を認めたと報道があった。

もし、日本で同様の訴えを起こしたら、戸籍に「男」「女」以外の性別を書いてもらえる可能性はあるのだろうか。性的マイノリティの問題に積極的に取り組んでいる南和行弁護士に聞いた。

●現状では「男」「女」しか認められない

「いまの日本で戸籍に『男』『女』以外の性別を記載することは難しいと考えます」

南弁護士はこう切り出した。

「その理由は、戸籍作成のもとになる出生届の記載事項について、法律が『男女の別』と規定しているからです(戸籍法49条2項1号)。

住民票の記載事項についても、法律は『男女の別』と規定しています(住民基本台帳法7条3号)」

そうした定義がなされているなら、「男」「女」以外の性別を書き込んでもらうことは難しそうだ。

ただ、この「男女の別」という表現は、明治時代の旧戸籍法から使われているもの。性別変更など考えられなかった当時と比べると、環境はずいぶんと変わっているはずだが・・・。

「日本では、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(性同一性障害特例法)が2003年に成立しました。

これにより、身体の性別と心の性別が異なるトランスジェンダー(性同一性障害)の人たちについて、法律が定める要件を満たせば、法律上の性別取扱いの変更を求めることが可能となりました。

しかし性同一性障害特例法も『生物学的には性別が明らかであるにもかかわらず、心理的にはそれとは別の性別』という言葉を使い(性同一性障害特例法2条)、男でなければ女、女でなければ男という『性別二分法』を前提としています」

●「多様性を受け入れられる法整備」を

今後もそのままで良いのだろうか? 南弁護士は次のように述べ、法改正に向けた議論の深まりに期待していた。

「現在の法制度が、『自分は男女いずれの枠にも規定できない』と考える人にとって、納得できるものなのか疑問が残ります。

自分がどのような性にあるかの認識(性自認)は、人によって多様です。その多様性を受けいれられる法の整備が求められます」

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る