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一発芸も商標登録の新たな対象?オリラジは「ラッスンゴレライ」をマネできなくなるか
2015年04月11日 09時24分

新しい商標登録制度が4月1日からスタートした。商標の対象はこれまで、文字や図形、記号などに限られていたが、テレビCMなどに使われる音や色彩、動きなども新たに加わった。初日からさっそく、大幸薬品の胃腸薬「正露丸」のCMで流れるラッパのメロディーなど、大手企業の出願があいついだ。

産経新聞は4月1日、このような音の商標について、お笑い芸人の「一発芸」のように楽譜にならないような音でも、商標としての用途が認められれば登録対象となると報じた。

一発芸といえば、最近では、お笑いコンビ「8.6秒バズーカー」のリズムネタ「ラッスンゴレライ♪」が大ヒット中だ。「オリエンタルラジオ」など、ほかの芸人も「ラッスンゴレライ♪」のリズムネタをマネて、笑いをとっている。

では、もし「ラッスンゴレライ♪」が一発芸として、商標登録されると、オリラジなどほかの芸人はマネできなくなってしまうのだろうか。エンターテイメント法務にくわしい高木啓成弁護士に聞いた。

新しい商標登録制度が4月1日からスタートした。商標の対象はこれまで、文字や図形、記号などに限られていたが、テレビCMなどに使われる音や色彩、動きなども新たに加わった。初日からさっそく、大幸薬品の胃腸薬「正露丸」のCMで流れるラッパのメロディーなど、大手企業の出願があいついだ。

産経新聞は4月1日、このような音の商標について、お笑い芸人の「一発芸」のように楽譜にならないような音でも、商標としての用途が認められれば登録対象となると報じた。

一発芸といえば、最近では、お笑いコンビ「8.6秒バズーカー」のリズムネタ「ラッスンゴレライ♪」が大ヒット中だ。「オリエンタルラジオ」など、ほかの芸人も「ラッスンゴレライ♪」のリズムネタをマネて、笑いをとっている。

では、もし「ラッスンゴレライ♪」が一発芸として、商標登録されると、オリラジなどほかの芸人はマネできなくなってしまうのだろうか。エンターテイメント法務にくわしい高木啓成弁護士に聞いた。

●「リズミカルで識別力のある一発芸は、商標登録できる」

「今回、音の商標として登録対象になるのは、CMなどに使われるサウンドロゴ(ジングル)やパソコンの起動音などが典型例です。しかし、これらに限定されるわけではありません。

ありふれた自然界の音のように、識別力のない音は登録対象になりませんが、リズミカルで識別力のある一発芸なら、商標の登録対象になると思います」

高木弁護士はこのように述べた。どのようにして、一発芸の商標登録が可能になるのだろうか。

「商標として登録するためには、どのような『商品・サービス』についての商標であるかを指定しなければなりません。

そこで、芸人が自分の漫才やコントの商標として、一発芸を出願するというケースが想定されます。その場合、サービスを『演芸の上演』と指定して、出願することになるのだろうと思います。

ただ、音の商標登録は始まったばかりの制度ですので、前例がありません。今後、個別に判断されますが、このような出願の場合には登録できると思います」

●商標登録されたら、他の芸人がマネできなくなる?

では、芸人が持ちネタの一発芸を商標登録した場合、どうなるのだろうか。

「よく誤解されるのですが、商標登録されたからといって、他の人がまったく使えなくなるというわけではありません。

たとえば、『TOYOTA』のロゴは『自動車』だけでなく、『自動車の修理または整備』を指定サービスとして商標登録されています。

ですので、トヨタ自動車(株)と無関係の自動車修理工場が、看板に『TOYOTA』のロゴを使い、『TOYOTA整備工場』などと表示して、『TOYOTA』を名乗ることは、商標権侵害にあたり、禁止されます。消費者が『トヨタ自動車(株)が経営している修理工場なのかな』とサービスの主体を誤認してしまうためです。

一方、その修理工場が、『トヨタの自動車の修理も取り扱っていますよ』と表示するために、POP広告などに『TOYOTA』のロゴを使う場合は、商標権侵害にあたりません。

なぜなら、この場合は、単に取り扱う自動車のブランドを表示したにすぎず、消費者がサービスの主体を誤認するような使用方法ではないからです」

●商標権侵害にあたるケースは限定される

「ラッスンゴレライ♪」が商標登録された場合、他の芸人はマネすることができなくなるのだろうか。

「もし一発芸が商標登録されたとしても、商標侵害にあたるのは、かなり限られたケースになると思います。

たとえば、他の芸人がコント中に、パロディで『ラッスンゴレライ♪』をマネしたにすぎない場合、視聴者が『<ラッスンゴレライ♪>をやっているということは、このコントは<8.6秒バズーカー>がやっているのかな』とサービスの主体を誤認することはないため、商標権侵害にはなりません。

商標権侵害になり得るのは、他の芸人がライブを行う際に、『ラッスンゴレライ♪』を使って集客して、『<ラッスンゴレライ♪>をやっているということは、これから<8.6秒バズーカー>がライブをやるのかな』と、客にサービスの主体を誤認させてしまうようなケースです」

高木弁護士はこのように述べていた。

どうやら、たとえ商標登録されたとしても、オリラジの「ラッスンゴレライ♪」が見えなくなるということは、ほとんどないといってよさそうだ。

(弁護士ドットコムニュース)

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