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図書館司書ストライキ延期、続く交渉に「身を切られる思い」
2018年12月19日 19時19分

東京都練馬区の図書館で、教育委員会と現場の図書館で働く非常勤司書たちが対立している問題で、12月19日と12月26日に予定されていた練馬図書館でのストライキは回避された。前日夜に教育委員会と非常勤司書たちでつくる労働組合が交渉を行った結果、両者に「一定の合意」があったという。しかし、組合側は「ストライキは延期」としており、2019年1月まで交渉は続けられる。残された課題とは? (弁護士ドットコムニュース編集部・猪谷千香)

東京都練馬区の図書館で、教育委員会と現場の図書館で働く非常勤司書たちが対立している問題で、12月19日と12月26日に予定されていた練馬図書館でのストライキは回避された。前日夜に教育委員会と非常勤司書たちでつくる労働組合が交渉を行った結果、両者に「一定の合意」があったという。しかし、組合側は「ストライキは延期」としており、2019年1月まで交渉は続けられる。残された課題とは? (弁護士ドットコムニュース編集部・猪谷千香)

●区立図書館における雇用の継続で「一定の合意」

練馬区には12館の区立図書館があるが、10年前から民間に運営委託する指定管理者制度の導入を進めており、区が直接運営しているのは現在、3館のみとなっている。さらに区側は今年7月、直営館2館にも指定管理者制度を導入する方針を明らかにした。

これに対し、30年にわたって練馬区の図書館運営を支えてきた非常勤職員司書である図書館専門員で構成する「練馬区立図書館専門員労働組合」が反対を表明。直営3館の協力体制のもと、練馬区の図書館行政が適切に行われてきたと主張、指定管理者制度の導入は運営の崩壊につながるとして、導入の撤廃や雇用の継続を求めてきた。

その交渉の中、区側は直営館の図書館専門員を学校図書館へ任用替えすることを提案したが、組合がこれを拒否。組合は2日間のストライキの決行も辞さないかまえだったが、12月18日夜に行われた教育委員会との交渉により、一定の合意があったとして延期を決定した。組合によると、「図書館専門員が司書として練馬区立図書館で働く場を奪わないこと」という要求に対し、区側は「光が丘図書館(直営館)でのカウンター業務を行わせる」と回答、大筋でまとまった。

組合は、「区より、光が丘図書館のカウンター業務を行わせるとの回答がありました。この回答を受け図書館専門員が区立図書館で働く場が確保される、指定管理者が拡充された際にも今後の交渉次第で区立図書館のサービス水準の維持が一定程度可能になると組合で判断しました」とコメントしている。

●「働く場」や「指定管理者」をめぐっては今後も交渉

区教委は弁護士ドットコムニュースの取材に対し、「図書館専門員の方たちを解雇する考えはないと当初より伝えていました」と話す一方、今回の交渉で直営2館に指定管理者制度を導入する方針は撤回しないことをあらためて明言した。その理由をこう説明する。

「民間にできることは民間にお任せしようということです。区立図書館は12館ありますが、徐々に指定管理者制度を導入し、すでに9館に5社が入っています。これらの図書館の利用者のアンケート調査でも満足度が高いという結果が出ています」

この利用者アンケートとは、2018年11月に全12館で実施されたもので、区立図書館のホームページでも公開されている。それによると、たとえば指定管理者が運営する平和台図書館では715人が回答、「職員の接遇」について「大変満足している」は35.9%、「満足している」は53.8%で、合計89.7%が「満足」と答えている。しかし、図書館専門員が9割という練馬図書館(直営館)でも693人が回答、同じく「大変満足している」が31.7%、「満足している」が53.2%で、「満足」が合計84.9%とその差はわずかだ。

また、利用者アンケートを参考にするとしても、「今後の区立図書館に望むことや期待すること」(全館の回答者数6390人)という項目では、「文芸・趣味・娯楽・実用書などを充実する」(10.4%)が最多で、次いで「飲食スペースを拡大し、くつろげる場所を増やす」(8.2%)、「貸出冊数を増やす」(7.9%)となっており、資料費増加や施設改善などで対応できるニーズが上位を占めた。

指定管理者制度には教育施設になじまないという指摘がある一方、東京23区では指定管理者制度を導入している自治体はすでに15区にのぼるという現実もある。その導入の背景には、財政状況が厳しさを増す中、コストカットを目的に選択する自治体も少なくない。練馬区でも、中心的な役割を果たしてきた直営図書館に指定管理者制度を導入すべきかどうか。その判断の前には、多くの区民を巻き込んだ、より深い議論が求められるだろう。

図書館専門員の一人は、「学校図書館への任用替えを提案された時よりは、一歩前進したと思いますが、これまで利用者の方達ととても良い関係を築いてきたため、(指定管理者制度導入により)それを継続できないという区側の回答には、身を切られる思いです」と複雑な心情を吐露した。

両者の交渉期限は来年1月18日まで。組合側は引き続き、指定管理者制度導入の撤回を要求するとともに、区立図書館における図書館専門員の処遇の詳細を話し合うことにしている。

【練馬区立図書館の図書館専門員とは?】

練馬区の非常勤司書は「図書館専門員」と呼ばれ、1年契約の雇用形態だが、勤続20年以上の専門員も多く、最長で勤続29年目という人もいる。現在の直営館である練馬図書館で32人、同じく光が丘図書館で25人が働いている。中でも、練馬図書館は全職員のうち9割にあたり、レファレンス担当館としてネットから寄せられる区民の調査依頼を一手に引き受けるなど、高度なサービスを行なっている。また、光が丘図書館でも、指定管理者が導入されている区内9館の蔵書や選書のチェックなど、運営状況のモニタリングを担当。区の常勤職員と同等の仕事を担っている。

(弁護士ドットコムニュース)

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