5872.jpg
新入社員の顔「すみっコぐらし」で隠したSNS投稿が話題 仕事で「顔出し」広まる時代、個人の意思に配慮した姿勢に絶賛の声
2025年04月07日 18時46分
#顔出し #サンエックス #リラックマ #すみっコぐらし

猫も杓子もSNSの情報発信に力を入れる中、この春の入社式で「新入社員の顔」を隠した写真を撮影して投稿したある企業に対して、多くの称賛の声があがっている。

新入社員のプライバシーを保護する姿勢が共感を得たようだ。半ば当たり前のようにされている「顔出し」の風潮への反発にも見える。

話題になっているのは、「リラックマ」や「すみっコぐらし」などのキャラクターコンテンツを手がけるサンエックス(東京都千代田区)。

弁護士ドットコムの取材に対して、担当者は、投稿への反響に驚きつつ、プライバシーや肖像権の保護はもちろん、キャラクターの世界観も大事にしていると明らかにした。

新入社員に限らず、社員の意思を尊重して「顔出し」を強制することはないという。

専門家は、顔写真を公開することによるメリットもあるが、不都合な利用のされ方でトラブルに巻き込まれるケースもあると指摘する。(弁護士ドットコムニュース編集部・塚田賢慎)

猫も杓子もSNSの情報発信に力を入れる中、この春の入社式で「新入社員の顔」を隠した写真を撮影して投稿したある企業に対して、多くの称賛の声があがっている。

新入社員のプライバシーを保護する姿勢が共感を得たようだ。半ば当たり前のようにされている「顔出し」の風潮への反発にも見える。

話題になっているのは、「リラックマ」や「すみっコぐらし」などのキャラクターコンテンツを手がけるサンエックス(東京都千代田区)。

弁護士ドットコムの取材に対して、担当者は、投稿への反響に驚きつつ、プライバシーや肖像権の保護はもちろん、キャラクターの世界観も大事にしていると明らかにした。

新入社員に限らず、社員の意思を尊重して「顔出し」を強制することはないという。

専門家は、顔写真を公開することによるメリットもあるが、不都合な利用のされ方でトラブルに巻き込まれるケースもあると指摘する。(弁護士ドットコムニュース編集部・塚田賢慎)

●「プライバシーに配慮してお顔が隠されているのも素晴らしい」

サンエックスは4月3日、公式Xで、新入社員が参加した晴れやかな入社式の様子を投稿。しかし、集合写真では14人全員がキャラクターのぬいぐるみで顔を隠していた。

この写真を見た人たちからは「プライバシーに配慮してお顔が隠されているのも素晴らしい」という称賛の声が上がり、6万以上のいいねがついている。

また、入社式のプレスリリースを見ると、新入社員だけでなく先輩と思しき女性社員の顔にもボカシがかけられていた。

画像タイトル サンエックスの2025年度入社式(©2025 SAN-X CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED.)

この春の時期には、例年通り、新入社員の紹介や、入社式の様子をSNSでアップする企業が相次いだ。投稿を見てみると、やはり社員の顔を出す企業も少なくなかった。

最近では、企業がインスタグラムやTikTokなどのSNSアカウントを開設し、社員を顔出しで登場させることもよくみられる。

●ネットに公開された顔写真が勝手に悪用されることも

サンエックスの取り組みについて、Xでは「ディープフェイクでいくらでも顔写真を悪用できるご時世に女性の新入社員もたくさんいるサンエックスがぬいぐるみで顔を隠させてあげるの本当に配慮が行き届いていて好感持てる」という意見もあった。

「顔写真とネット・SNSのトラブル」をめぐっては、卒業アルバムやネットの顔写真が、AIによるディープフェイクポルノ(本物と酷似したわいせつな動画・画像)に使われるケースもあり、鳥取県ではAIなどを用いた「性的ディープフェイク」を禁じる青少年健全育成条例の改正案も先月可決された。

また、業務命令で撮影・公開された「顔写真」について、退職後に削除を求めたい人もいる。

●弁護士の指摘「同意ない顔出しは『肖像権』侵害にも」

企業が従業員にネットやSNSに「顔出し」させるにあたり、どんなことに気をつけるべきだろうか。インターネットのトラブルにくわしい清水陽平弁護士は「企業との関係性で断りにくい従業員もいる」と指摘する。

「人には『肖像権』という人格権があるとされ、肖像権侵害になるかどうかは受忍限度を超える侵害があるといえるかどうかにより判断されることになります。本人の同意なく顔出しさせてしまえば、肖像権を侵害していると判断される可能性があります。

一方で、顔出しに同意を得ていれば、侵害とは判断されにくいことになりますが、企業と従業員という立場の関係で、特に新入社員であれば、指示を拒否できないケースも多いのではないかと思われます」

企業としては、このようなことに配慮することはもちろん、事前に同意をとることも重要だという。

「たとえば書面で同意を得る場合は、同意欄に 『拒否可能である』ことを明示するなどして、きちんと任意性を保つような形式を整えておくことが重要といえます。

また、退職後に削除したいといった希望を受ける可能性もあります。同意の際に退職後のことまで考えていない従業員もいると思われますので、退職後も表示し続けることに同意するかということも確認しておくべきです」

ほかにも、トラブルを避けるためには、ネット上に掲示する期間や場所などについても同意を得ておくのがよいと清水弁護士は言う。

●サンエックス「大事にしてきたことが、入社式の写真がきっかけで話題となりうれしい」

新入社員の「顔を隠した」狙いについて、サンエックスは弁護士ドットコムニュースの取材に答えた。

——Xやプレスリリースで公表した入社式の記念写真で、新入社員の顔をオリジナルキャラクターのぬいぐるみで隠したことにはどのような狙いがあるのでしょうか。

プライバシーや肖像権の保護の観点ではもちろん、サンエックスはキャラクター会社として、ファンの皆様にとってキャラクターの世界観を守ることも大切に考えています。

そのため、入社式の写真では、新入社員の顔を弊社オリジナルキャラクターのぬいぐるみで隠した写真を撮影することにしました。

——サンエックスでは、新入社員だけではなく、ほかの社員も望めば顔出しせずに働くことができるのでしょうか。

個人の意思を尊重するようにしています。取材依頼を受けた際など、強制はせずに確認するようにしています。

——投稿への反響の受け止めを教えてください。

弊社として大事にしてきたことが、入社式の写真がきっかけで世の中的に話題となり純粋に嬉しく思います。

これからもキャラクターの世界観と社員を大事にしていきたい思いは変わりませんので、キャラクターも企業としてもぜひあたたかく応援していただけたら嬉しいです。

また、入社式の写真に写っているキャラクターは、サンエックスのキャラクターでもあり、サンエックスの正式な正社員としても働いている広報「コロニャ」(@coronya_sanx_diary)ですので、コロニャの働きぶりにもぜひ注目してくれたら嬉しいです。

——気になっているファンが多かったのでお尋ねしますが、新入社員が選んだキャラクターは自分たちの推しキャラでしょうか。

こちらはみなさまのご想像にお任せとさせてください。

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る